20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:長嶋探偵 作者:bk201

第2回   2
私は、とあるきっかけで、探偵の助手をすることになってしまった。
その探偵というのが、顔は綺麗なのだが口を開けば、毒舌で人をばかにする。
しかも、そのことを友達に言ったら、なんと「その人私にも紹介して」だの「綺麗だったら文句言わない」だの「麻衣だけずるい」だのさんざん言われてしまった。
「ねえ、探偵さん依頼人来ませんがホントに儲かってるんですか?」
私は、探偵に向かって皮肉をぶつけた。
探偵は、読んでいた新聞から目を離して呆れた顔をしながら私のほうに向いた。
「探偵ってのは、依頼をしない人は、裏でこそこそ嗅ぎまわる最低な職業とよく思うらしい、だから儲からない所や信頼にかけるところは大概すぐつぶれる。」
「そっか〜じゃあここは儲かってるんだ〜その割に依頼人来ないけど・・。あっそれともう一つ気になってたんだけど名前なんていうの?」
またも皮肉をぶつける。
探偵は、私から目をそらして読んでいた新聞をまた読みだした。
どうやら答える気はない様子だった。
「何で教えてくれないんですか?いいじゃないですか教えってくれたって。」
私は、少し怒った様子で問いかけた。
「・・・そんな事より、君は仕事をしたらどうだ?」
「仕事って何ですか?話しをそらさないでください。」
「・・・はぁ、君の仕事は簡単に言うと雑用だ、依頼人を出迎えるのも仕事の一部だ。」
探偵は、新聞に目をやったままそう言った。
私は、よくわからないので、黙って考えていると、此処の扉をノックする音が聞こえてきた。
「もっもしかして、依頼人?」
「もしかしなくても此処に来るのは、君か依頼人かのどちらかだ。」
私は、慌てて扉をあけに行った。
扉を開けると、そこには二十代後半ぐらいの綺麗な女性が立っていた。
「此処は、探偵事務所・・・ですよね?声がするのに開けてくれないから、違うかと思いました。」
そう言ってその女性は、微笑んでいたが皮肉を言っている気はなさそうで、むしろ間違いではなくて、ほっとしているように思えた。
{この人、日本人にしては寝鼻立ちがいいな、それに、雪みたいに肌が白くてきれい。羨ましいかも。}私は、心の中でつぶやいた。
「あの・・・此処で依頼の話はするのですか?」
女性は、少しためらったように言った。
「・・・?あっすみません、中にどうぞ。」
私は、どうやら、玄関でかなり待たせてしまったらしい。
慌てて中に案内し、探偵が座る向かいの椅子に女性を座らせると急いでお茶を用意しに行った。
用意している間に依頼の話は進んでいて、私が、お茶を出してからも話しはしていたが
私自身あまり聞いてはいけないような気がして近くの椅子に腰をおろして見ている程度だった。
なので、判ったことは女性の名前は式部人見ということと此処に来たのは妹を探してほしいから、ということだけだった。
二人は、他にも妹がどうして居なくなったのかやその子の特徴などを話してはいたが、私は、そこしか聞いていなかった。

しばらくして、話しが終わり人見さんは椅子から立った。
「では、よろしくお願いします。」
「ええでは、何かわかったら携帯に連絡します。」
「判りました、あっそれと、代金は前金として十万そちらの口座に振り込ませていただきます。」
「それは解決してから出構いませんよ。」
「いえ、こちらは迷惑料といいますかその・・・、取り合えず解決できなくてもこのお金は返済しなくて結構ですので、受け取ってください。」
女性は、そう言った後、私と探偵に一礼して扉を開けて帰って行った。
「ねえ、どうして、人見さんの依頼引き受けたの?私の時の依頼は引き受けなかったくせに。」
「・・・・。」
探偵は、真剣な顔でじっとわたしを見つめてきた。
「何で答えないのよ、あっもしかして、あの人がきれいでほっとけなかったとか?人で仕事を選ぶなんて最低ね。」
私は、同じ人探しの依頼をしたのに人見さんの時だけ、引き受けた探偵が気に食わず、少しいいすぎたことを言った。
「別にあの人がきれいだったから、引き受けたわけでもほっとけなかったからでもない。それに、君の時とはだいぶ違うと思うが・・・。」
いつもだった、私の文句一つを、二倍ぐらいの毒舌で返してくるのに、それをしないから、何だか急に文句を言った罪悪感が出てきた。
「・・・何が違うの?人探しなんだからあんまり変わらないじゃん・・・。」
素直に謝れない私は、少し口ごもった声で質問した。
「本当にそう思う?・・・まあ僕も確信があるわけじゃないから別にいいんだけど。」
後のほうからだんだんいつもの口調に戻ったせいで、また、ムカついてきた。
「あっそうですか!私には、何が違うか教えてくれないんですね。」
それ以降、探偵は、何も言わなかった。
私も、それ以上、突っ込む気も起きず、黙りこんだ。


その日の、依頼はそれ以外にも何個かあったが、探偵はそれを全部断ってお詫びを言っていた。
しかも、名前はあのまま聞けずじまいだった。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 2109