少し車を走らせながら、高井が言う。 「ドコで食べる?」 私の知ってる店は、あっちゃんと行った所ばかり。 全然、知らない店がいい。
「高井さんにお任せしていいですか?」 「じゃあ。時間もないし、近くで。」
入ったのは、美味しいと評判の蕎麦屋だった。 サクッと食べて帰るのに調度いいし、変に気構えなくて済む。
気を使ってくれたんだな。と、思った。 「最初に少しだけ、飲むか?」 「高井さんは、ダメですよ。運転あるでしょ?」 少し、笑って言った。 「1杯くらい、平気だよ。」
1杯だけ。の、つもりでビールを頼んだ。
二人きり。 たまに、こういう時間はあったけど。 意識した後では、ワケが違った。
胸がいっぱいになった。 緊張もした。 悟られるのが、恥ずかしくて。ビールを追加してしまった。
この時、何を話したのか。 よく覚えていない。 取るに足らない会話だったと思うけど。 楽しくて。 嬉しかった。
気が付けば、つまみを注文し。 お酒を追加し。 最後に蕎麦を食べた。
「時間、大丈夫?」 高井に言われて、時計を見た。 3時間が過ぎている。 現実に戻った私は、寂しい気持ちになった。 「…帰ります。」 「タクシー、呼ぼうか?」 「いえ、まだ電車がありますから。高井さん、車はどうするんですか?」 「駐車場を移動して、適当に帰るよ。」
「ご馳走さまでした。」 「楽しかったよ、またね!」 高井が笑う。 私は、先に店を出た。
最寄りの駅は、スグそこだった。 また、高井の気遣いに気付いた。 すぐ帰るにせよ、ちょっとお酒を飲んでも。 困らぬように。の、店のチョイスだったんだ。
電車に乗ると。 自分が思うより、酔っていることにも気付いた。
あっちゃんに、何て言おう。。。
言い訳も思いつく前に、部屋に着いた。 「ただいま…。」 「遅いっ!!」 「ごめん、美奈ちゃんの話、止まらないんだもん。」 「メールくらい、出来るだろ。」 「だから、ゴメン!!」
あっちゃんの顔が見れなかった。 着替えて、メイクを落とす。 後ろから、あっちゃんの声が聞こえる。
「疲れたから。」 とだけ言って、ベッドに入った。
胸の中では。 さっきまでの高井の笑顔で、いっぱいだった。
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