あっちゃんとは、20代の殆どを過ごしていた。 私は今年30才になる。
優しくて、明るく、社交的で冗談の上手い。 あっちゃんが大好きだ。
仕事の愚痴を聞いてくれて。 休みの日は、デートに連れ出してくれて。 連休があると旅行に行った。 なんでもない日に、サプライズのプレゼントをくれた。
そして、私は毎日、笑っていた。 そう。 本当に、よく笑う日々だ。
あっちゃんが大好き。 あっちゃんが大好き。 あっちゃんが大好き。
出勤前の朝。 あっちゃんが、私に笑いかける。 昨夜の出来事を知らず、信じて疑わない、まっすぐな瞳を私にむける。
「今夜。飯どーする?」 「あっちゃんより、仕事、遅くなるかも。美奈ちゃんの手伝いがあるの。」 「そっか。じゃ、先に帰って待ってるよ。」 「うん。大体の時間が分かったらメールする。外食になるね。」
いつもの会話。 いつもと違うのは。 あっちゃんの瞳を、素直に受け止められなくなってしまった。
顔は、向けるように心掛けた。 心変わりを、気付かれぬように。
高井の気持ちに応えた、その瞬間に。 大事な人。が、すり替わってしまった。 もう、気持ちは止まらない。 高井への想いを抱えながら。 目の前には、大好きなあっちゃんがいる。 苦しい。
『大事な人は一人だけ。二人は、ありえない。』 自分で自分に言い聞かせながら。 変わらぬ態度で、あっちゃんと話し。 別れ話を。いつ切り出そうか考える。 私は、自分を責めながら、高井のいる会社へ出勤する。
コートを着て、外へ出た。 風が冷たい。 寒いのは。 季節のせいだけじゃない。
と、思った。
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