「付き合ってくれない?」
どこの街にもある、居酒屋で上司の高井翔太と二人。 突然の告白だったけど、別に驚かなかった。
なんとなく気付いていたし。 私も、いつしか。 尊敬から恋愛感情を持つようになっていた。
でも。 私には。
一生一緒にいよう。 何があっても、添い遂げようと、誓った人がいる。 結婚こそしていないけど、長いこと同棲している。 あっちゃん。 大事な人だ。 別れる気はない。
だから。 高井への想いに蓋をし、自分でも気付かないフリをしていたのかもしれない。 返事は決まってる。
「今のままが、いいんですけど。。。」
「悪いけど。それは出来ない。 もしダメなら、会社も辞めてもらいたい。 次の勤め先の紹介もさせてもらうよ。」 「なんですか、それ?…少し考えさせてくれませんか?」
「同棲している相手がいることは知ってる。 でも。…苦しいんだ。今、聞かせてくれないか?」
ズルイ。
と思った。 滅茶苦茶だ。 大人のくせに。 思い通りにならないなら、転職を迫るなんて!
同時に。 私の返事次第で、もう会えないかもしれない。とも思った。
とにかく、二択を迫られた。
私の返事。 「いいよ、付き合っても。」 小さな声で言った。
短時間で、最大の決断だった。 もう、自分の気持ちを押し殺せなかったのかもしれない。
のちに、翔ちゃん。と呼ぶことになる高井は。 びっくりし、喜び、ありがとう。と言った。
同棲中のあっちゃんに、別れ話をしなければ。 『うまくいっている』と信じている大事な人を。 傷付ける。
そう思った私も。勝手に傷付いた。
この夜の帰宅は、辛かった。 あっちゃんが待ってる部屋。 深呼吸をし。 普通に、普段通りに。と自分に言い聞かせ。 「ただいま〜。」 と、ドアを開けた。
「遅いじゃん!こういう日は迎えに行くからメールしろって言ってるのに!」 あっちゃんの心配と優しさに。 私は背中を向けて着替えた。 「ごめん。まだ、電車があったし。その方が早かったから。」
本当は、タクシーで送ってもらった。 メールなんて出来ない。
最初のウソをついた。冬の夜だった。
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