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作品名:ココロ 作者:snow

第1回   1
「付き合ってくれない?」

どこの街にもある、居酒屋で上司の高井翔太と二人。
突然の告白だったけど、別に驚かなかった。

なんとなく気付いていたし。
私も、いつしか。
尊敬から恋愛感情を持つようになっていた。

でも。
私には。

一生一緒にいよう。
何があっても、添い遂げようと、誓った人がいる。
結婚こそしていないけど、長いこと同棲している。
あっちゃん。
大事な人だ。
別れる気はない。

だから。
高井への想いに蓋をし、自分でも気付かないフリをしていたのかもしれない。
返事は決まってる。

「今のままが、いいんですけど。。。」

「悪いけど。それは出来ない。
もしダメなら、会社も辞めてもらいたい。
次の勤め先の紹介もさせてもらうよ。」

「なんですか、それ?…少し考えさせてくれませんか?」

「同棲している相手がいることは知ってる。
でも。…苦しいんだ。今、聞かせてくれないか?」




ズルイ。




と思った。
滅茶苦茶だ。
大人のくせに。
思い通りにならないなら、転職を迫るなんて!

同時に。
私の返事次第で、もう会えないかもしれない。とも思った。


とにかく、二択を迫られた。


私の返事。
「いいよ、付き合っても。」
小さな声で言った。

短時間で、最大の決断だった。
もう、自分の気持ちを押し殺せなかったのかもしれない。

のちに、翔ちゃん。と呼ぶことになる高井は。
びっくりし、喜び、ありがとう。と言った。


同棲中のあっちゃんに、別れ話をしなければ。
『うまくいっている』と信じている大事な人を。
傷付ける。

そう思った私も。勝手に傷付いた。


この夜の帰宅は、辛かった。
あっちゃんが待ってる部屋。
深呼吸をし。
普通に、普段通りに。と自分に言い聞かせ。
「ただいま〜。」
と、ドアを開けた。

「遅いじゃん!こういう日は迎えに行くからメールしろって言ってるのに!」
あっちゃんの心配と優しさに。
私は背中を向けて着替えた。
「ごめん。まだ、電車があったし。その方が早かったから。」


本当は、タクシーで送ってもらった。
メールなんて出来ない。

最初のウソをついた。冬の夜だった。


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