ばかみたいに静かな夜だった。なまぬるい布団を這うように抜け出してからどれくらいたったのだろう。しかし、振り仰いで見た時計は壊れているようだった。 あれからまだ十数分しかたっていないのはおかしいだろう。 同意を求めるようにどこか必死に携帯電話をとると、それも同じことを言っていた。つまるところ、おかしいのは私の方らしい。 座った床は冷たい。そのままごろんと転がると、ところどころでごつごつとした違和感が広がる。それが今の私には丁度良かった。 しん。という音もしない。隣部屋からの物音も外からもない。私が動かなければこの部屋の中も音はなかった。 なのに、私の中は音と閃光に溢れかえっている。 今日、昨日、過去が脈絡もなく現れ、私を叩きのめしていった。 耳が痛い。眼が痛い。 暗闇と静寂は私の脳まで入ってこない。昼が活発であればあるほど、それが夜を浸食していくようだ。 歯を食いしばるように瞼を閉じ、開いた。 時計を見ると、あれから5分もたっていなかった。
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