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作品名:S・O・S : S-CITY OF SYADOWS 作者:ふ〜・あー・ゆう

第15回   15
一瞬、青白い光が見えた。マチェクはその場に崩れ落ち車のシートの隙間に転がった。倉石は呆然としたが、とっさに車外に出るしかなかった。刑は車内から動かず、マチェクの亡骸をじっと見つめていた。「倉石は気づいてないんだな。マチェク、お前、生きているだろ。」「わかりましたか。」マチェクがむっくり起き上がった。倉石が驚いた表情で車内を覗きに来た。「どういうことだ。」「ミストは放射性物質を携帯サイズで自在に管理する技術はまだ持ちえていません。だいたい人類が火を発見してから何万年も経っているのに未だに火災はなくならず、つまり、火力・電力・原子力、何一つ完璧に御せてはいないんですよ、多分。」「だが、どうして効き目が無いとわかった。」「倉石と組むずっと以前にヘマをしまして、スティックを折ったことがあるのです。光は単なる発光体のものでスティックの中身はありませんでした。」マチェクはかつて自らの失態に判決を下した際にスティックの無効を知ってしまったのだ。その死に臨む究極の体験が彼を冷徹な鬼と化したのかも知れない。「ミストは俺たちの忠誠心を試すためにスティックを渡していたのか。」「そのようです。作戦失敗時の自決はゴルゴダのお得意です。私たちミストは素性が発覚したとき以外は人知れず生きながらえることを選択させられます。」「じゃ、俺たちの自決方法は第二の方法しかないわけだな。」「そうです。やはり火力が一番と言うことですね。バーン・アフター・フェイリングいやフェイラー。でも、ミストは生きのびることを選択させますからね。」「どうでもいい。俺は警察に顔を知られている。第二の方法を教えろ。やっとこの日が来たんだ。」倉石は無言でカプセルと小型ナパームの二つを手渡した。「ナパーム・カプセルは飲め。小型ナパームは手元で起爆しろ。体の内と外から燃え上がり、跡形も無くなる。吹っ飛ばされるときも同様だ。二発のナパームは瞬間的に飛び散るお前の体を焼き尽くす。灰は残るが風に舞って証拠は残らない。仮に灰のDNA鑑定をしたとしても人物の特定に到る確率は低いだろう。」「これが第二の方法です。手口はゴルゴダと同じです。」「ゴルゴダと同じ・・・。」「やつらは失敗すれば衆人環視の中でも消滅する。自分達の存在を隠さない。だから、なんでもやる暗殺集団として知られている。俺たちは人前では消えない。そもそもミストの存在は毛ほども気づかれてはならないからだ。」「なぜ、消滅方法が同じなんだ。ミストがやつらのまねをしてるのか。」「まさかな。しかし、逆も考えられない。俺たちは存在も知られず、消滅も人前では遂行しない。となれば、その方法など知られるわけが無いからな。」「終わり方が同じというゴルゴダとミストの謎の共通点です。偶然だと思いたいですが。」「ですが・・・。」「直感です。気になさらず、さっさとカプセルを飲んでください。」 そのとき、倉石にメールが入った。「クライング・ジーザス・クライスト・ミスト」倉石が呟いた。「同時襲撃ですか。」マチェクが聞いた。「わからねぇ。襲撃じゃなく緊急の依頼かも知れねぇ。刑、お前の処分は後だ。」「何があったんだ。」「ミストのSOSだ。元々、お前の処分は俺たちに任されてる。ミストは本当は自決に関心なんかねぇー。ただミストへの忠誠の証と、俺たち末端の見知らぬ同士が信頼しあうには掟が必要だろうってことで自決方法まで用意してくれてるだけだ。」「ゴルゴダと同じ方法でか・・・。ジーザス・クライスト≒キリストとゴルゴダ・・・。敵と味方・・・、裏表・・。」「命拾いしましたね。でも、あなたは車から逃げ出さなかった。覚悟してたのがわかったので私は倉石より刑を信用しますよ。彼は一目散に逃げましたからね。」「勝手にしろ。」倉石が舌打ちした。


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