20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:YOKONORI RACER(ヨコノリ・レーサー) 作者:ふ〜・あー・ゆう

第18回   マドンナ・ライダーC
タテうらの言葉に3人は押し黙った。互いの苦渋した顔を見つめあった。しかし、すぐさま椎野が口を開いた。
「そんな、ジージがそんなこと。ジージは出たいから出たんだろ。」
「でも、今回のレース、あの娘出すって勝手に決めちゃってからジージに知らせたんだろ。」瀬津が間髪いれず、反駁した。
「レースのこと伝えてないの、忘れてましたって言って、あやまっといたんだけど。」
「それでも、ジージ、チーム椎野で出たそうだったもんな。」瀬津が言った。
「ジージが橋上でごぼう抜きしてるぞ。ヘリも併走してカメラ回してる。」タテうらが言った。
「CM大賞はジージになっちゃうのかよ。」
「ジージ、ごめん。やめてー。」
「個人エントリーの際のサポートぐらいしてやりゃよかったのに、お前がせこいことすっからだよ。」タテうらが椎野をたしなめた。
「でも、ジージの方から個人で出るって言ってきたんだからぁ・・・。てっきり、承知してくれてるはずと・・・・。」
「当たり前だろ、さっきも言ったけど、お前が彼女のチーム・エントリー決めちゃってたんだから。」瀬津も椎野を責めた。
「彼女をチームエントリーにするか個人エントリーにするか、1人で先走る前にもっとジージに作戦とか聞いてから決めればよかったな。」タテうらが言った。
「椎野、お前彼女に手とり足取り教えて、単独優勝させてあげたら何か別な狙いがあったんじゃないの。」
「おいおい、店長の職権乱用だ。」タテうらが言った。
「ま、まさか。そ、そんな・・。」
「語彙がすくねーな。図星だな。」
「ひ、人の人生設計に勝手に踏み込むにゃ!にしても、ジージ、いまいましいわい。」
「おいおい、本音がもれてるぞ。」
「聞こえる? ジージが後から来てる。君を抜かす気だ。」
「ジージのパワスラ・テク凄いぞ、あっという間にループ橋を降りてきてるぞ。」
「そろそろ、傾斜がゆるいから、普通にパワスラして体力を温存して。」椎野は瀬津の言葉に無関心を装って続けた。
「でも、ジージさん、もう横に来ちゃってるの。」
「えっ重なってて見えなかった。」
「なんだ?ジージ、彼女の手を引いてエスコートしてるぞ。」タテうらが言った。
「彼女はもう体力が無い、ジージが引っ張ってあげてる。」
「そうか。ジージはこうなるとわかっててエントリーしたんだ。」
「チームのために・・・彼女のために・・・」
「そうか。そうだったのか。俺達はなんて醜い・・・。」瀬津が呟いた。
「ジージ、ごめんなさい。俺はなんて薄汚いんだ。自分の幸せのために人の生きがいを奪おうとしていたんだぁ。」椎野が頭を抱えてうめきながらジージにわびた。
「待てよ、ゴールに男がいる。」タテうらが言った。
「ジージがエスコートして彼女の手を男にバトンタッチしたぞ。」
「おい、よく見ろ。あの男。」
「!」
「元プロスケーターの八千草じゃないか。怪我で引退した・・・。」
「ジージは知ってたのか。彼女と彼のこと。」
「もしかして、彼の夢のために彼女がこのチームに入ってきたってこと・・・。」勘のいい瀬津が言った。
「うそ。だって、俺の店に来て、俺が連れてきたんだぞ。」
「最初からお前がいるのを知ってて、バイトに来たんじゃないのか。」
「チームに入るためにコンビニに・・・、椎野に会いにきた・・・。」
「ジージはそのこと知ってて、椎野に言えなくて、それでわざわざ個人エントリーして、彼女をサポートしたんだ。」
「ジージ、彼ともじっくり話しこんでるもんな。」

椎野はしばし沈黙した。
なにやら思いをめぐらせている。

「・・・・・あっそ。彼女、賞金持ってきても、いらないって言ってね。俺、店に戻るから。」椎野はぶっきらぼうにその場を去った。

夕日が泣いている・・・。優勝。どうってことなく大会は終わった。

鈍感な椎野の淡い恋?が、またも終わりました・・・。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 4847