ミムは仰向けになり、星空を映し、蒼く淡い光を放散するシーリングを見つめて考えていた。 「熱もないのに熱がることはあるのかな・・・。」 「どういうこと・・・」 「マルケスが凍土の作業で熱がってたんだ。」 「・・・」 「自分でも理由がわからないらしい。」 「体質よ・・・。中央局にもそんな人がいたって噂を聞いたわ。・・・それも噂というだけだけど・・・。」クースが消え入るような声で言った。 「ふーん・・・。」ミムは再び黙って考え始めた。 クースは、まどろみながらミムの眼を見つめていた。
・・・何か大きな存在によって自分達は守られている・・・はるか昔の存在・・・自分達の祖先・・・彼らが全てのシステムを構築したんだ。はるか未来を見据えて・・・、おかげで、こんなときでも生命だけは影響を受けない・・・この船は命のゆりかごとして完璧なんだ・・・・・。
でも?。
システムはどこからを命と捉えているのだろうか。ウィルスの段階は生命と捉えているんだろうか。記録では、この時期に滅びたものもあるようだし、生き残ってきている型のウイルスもある。特に、たちの悪いのが生き残ってきたらしい。まぁ、人間に対してということだから、ウィルス自体には善も悪も無く生き延びて来たってことだろうが、それらにとって好条件となった・・・凍てつかなかった理由はなんなんだろう?・・・。人類の、自分達の祖先はウィルスによる淘汰も完璧に想定していたんだろうか・・・。
・・・生命と無生命の境、生き残るものと淘汰されるものの境・・・
そんなことを考えてしまった彼の心に、漠とした不安が沸き上がってきた。
彼は、ふとクースの方を横目で見た。クースは昼間の疲れからか、すでに寝息を立てていた。 ・・・そうだ。考えすぎだ。俺も、もっと疲れ切るぐらいにがんばらなきゃだめだ。今は大変な時期なんだ。考えてる余裕なんて無いはずだ・・・。
しかし、未来への彼の不安は消えなかった。
今を生きるだけなら動物達と一緒だ。動物達は未来を考えて生きてはいない。彼らには今しかない。人は未来を考えることができる。 だから、こうして俺達は生きていられる。未来を考えてくれた偉大な祖先のおかげで。 だが、何だろう・・・、この不安は・・・。
彼は眼を閉じた。その瞬間、意識は薄れ、闇の中へ沈潜していった。 音が聞こえてくる。あの音だ。・・・今、起きつつあることは既に経験している・・・。この音が聞こえたときは寒さの記憶がある。 あ!!、あれは・・・なんだ?!、光・・・。空から光が・・・。
ほんの一瞬だが、フラッシュバックのように初めてミムは視覚的なものを感じた。
なぜだ・・・なぜ、わかるんだ・・・なぜ、今起きていることの終末が、自分自身の終末が。・・・ありえない・・・。
だが、彼は、ほぼ気づいていたのだ。この音をかつて生を享けたときに聞いていたのでないかということを。なのに、まだ受け入れられない。自らの中に潜在する天賦の能力のことを・・・。
・・・聞こえる。システムが作動している。とにかく寒くなる・・・。
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