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作品名:少年課特諜室・吉村裕二 作者:彫裕

第4回   因縁
 朝倉数馬は所謂、同盟チームだったが、宗政の「極楽」は何処にも属さない単独のチームだった。従って吉村達と友好関係には無く、その後の親友関係になるまでには幾度かの抗争があった。
 所詮、若者達が親友を見つけるには喧嘩が付き物であるように、チーム同士の代表が一対一の勝負で決着を着ける際、出てきたのが吉村と宗政だったのだ。
 宗政は喧嘩上等のチームに在って、中でも一番の猛者だった。
吉村は勿論、格闘技を習得していたのでやたらめったら喧嘩はしないが、仲間の為なら一線を越えるほどの凶悪ぶりを発揮する所謂、阿修羅だった。

 所詮、吉村も人間であるし、その頃は逮捕術など習得していないので、宗政とは五分の戦いになった。
 体格のいい宗政と平均的な体格の吉村とではウエイト差があり、宗政有利だったが、吉村の格闘技術と並外れた根性は宗政の体格をも凌駕した。
 二人を止めたのはお互いのチームの仲間達だった。
 二人ともボロボロになっていたが、本来、タイマン勝負は双方どちらかが降参するまで第三者は止める事を禁じられていたのだった。しかし、お互いのチームのメンバーは「もう十分だろう」という意見に至ったのだった。

 結局、結果が出なかった喧嘩だったが、あの「阿修羅の裕二」と五分に渡り合ったというだけで、「極楽」の宗政の格は上がった。
 お互いに憎しみあってやった喧嘩ではなかったので、恨みなどあるはずもなく、お互いの実力を認め合った二人はなるべくして親友になったのだった。

 吉村の携帯が鳴った。
 電話の相手は警視庁の竹崎だった。
「女子高生の一人が話したぞ。どうも、金貸しから結構な額を借りていて、その返済に困って買春をやったらしい」
 竹崎が言った。「その大元が東亜連合の枝で東新興業なんだ」
「東新興業?」と吉村は知らない様子だった。
「聞いて驚くなよ。そこのナンバー2が蟹沢健司なんだよ」

 その名前を聞いた瞬間、吉村の心臓は激しく脈打った。

「かっ蟹沢健司?!」

 蟹沢健司は元「ブラックカイザー」のリーダーで吉村とは因縁の宿敵同士だった。
 引き金は、吉村率いる「グレード1」と朝倉数馬率いる「スペクトル」の合同で蟹沢健司たち「ブラックカイザー」の殲滅作戦を行った時だった。

 ある夏の深夜、吉村達は千葉の房総半島に向かった。
 それは蟹沢達の地元へ乗り込むためだった。しかし、情報が漏れていたのか現地に到着した時には「ブラックカイザー」のメンバーは一人も居なかった。
 仕方が無いので吉村達は現地で解散し、小グループに分かれて帰ることにした。何故なら、その時に集まった二輪、四輪の数が二千を超えていたので目立ちすぎる為に警察に捕まる可能性が大きかったからだった。

 吉村と数馬は二十台位の小グループで走っていた。すると海岸線の道路に二百人位の集団が停車していた。てっきり仲間の集団だと思った吉村達は、その集団に近づいた。 向こうも手を振っているので間違いなく仲間だと思った。瞬間、その二百人が怒涛のごとく吉村達に襲い掛かった。

 蟹沢達「ブラックカイザー」の待ち伏せだったのだ。

 すっかり取り囲まれると、数に任せて滅多打ちが始まった。一人は日本刀で背中を切られ、一人は4〜5人で袋叩き、なかには道路の側溝に落とされコンクリートの蓋をされる者までいた。
 やばいと思った吉村が相手のリーダーにタイマン勝負を申し出た。

 そのリーダーが蟹沢だったのだ。

 蟹沢は「タイマン勝負だ? お前、状況が分かってねえなあ。こっちの勝ちは見て分かるだろ」
「タイマンで一気にカタを付けようぜ」と吉村は強気で押す。
「ブラックカイザー」の面々は蟹沢の勝利を疑わないので、やってしまえと囃し立てる。「仕様が無い」と蟹沢が吉村の前に立った瞬間だった。
 吉村のチョーパンが蟹沢の顔面に炸裂した。
 不意を突かれてまともに顔面に食らった蟹沢は鼻を潰され、鼻血を噴出しながらアスファルトに倒れこみ、身体を小刻みに痙攣させている。
 脳震盪を起こして気を失ってしまったのだった。

 蟹沢の勝利を信じていたブラックカイザーのメンバー達は自分たちのリーダーが無様にやられたことに対し怒り狂った。
 当然、二十対二百では勝てるはずもなく、数馬はクルマを破壊され吉村達も無傷で帰れるはずが無かった。そして、付近の住民の通報により警察が出動。全員検挙された。

 吉村達が引退した後は争いも沈静化したが、それまではとにかく中が悪かった。
 その因縁の相手が再び吉村の前に現れたのだった。


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