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不確かなもの「愛」
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第9回
9
健介は、自分が新人で失敗した時に先輩が励ましてくれたように、今度は後輩を元気づけてあげたいと思ったのだ。 美紀は素直に喜んで参加を承諾してきた。2次会の定番「カラオケ大会」ではみんなノリノリで歌い大いに盛り上がり、美紀もはしゃいでいつもの明るさが戻ってきたような感じになった。健介は安心した。
「美紀ちゃんは笑顔がとってもいいよ。みんなね、君の笑顔が好きなんだよ。」 帰り道、健介は酒も手伝っていつもより気安い感じで話しかけた。美紀は顔を赤らめた。
「本当ですか?嬉しいです。あの、高城課長もそう思ってくださってるんですか?」 美紀も酔っているせいか、新人にしては大胆な発言をした。
「ああ、俺も好きだよ。」
「あの、私も高城課長の笑顔、好きです・・・。この間、とんでもない失敗をして本当にご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。あの・・・私、課長に嫌われてしまったんじゃないかって、とっても辛かったんです。誘っていただいて、私・・・本当にありがとうございます。」
美紀は、途中で泣きそうになりながらも一気に話した。
健介は、心から可愛いなと思った。そして同時に、そんなふうに思ったことが今まで一度もなかったことに気づいた。我が子を可愛いと思うのとは全く違う感情で、もしかして妹でもいればこんな感じなのかなとも思ったのだ。
「いつもの美紀ちゃんでいてくれよ。」
健介は美紀の肩に手をまわした。美紀は、健介の優しさに感極まって本当に泣き出し、健介の胸に顔をうずめてきた。甘い香りが健介を包んだ瞬間、彼の中で何かがパアンとはじけたような気がした。 その香りは若い女性特有の香りだった。みずみずしいオレンジのような花のようなその香りは、健介に、ラグビーに燃えていたエネルギシュな大学時代の自分を思い出させたのだった。
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