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不確かなもの「愛」
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第8回
8
健介と美紀の関係が始まったのは、美紀が入社して4か月過ぎたころだった。 美紀は女子大を出て新卒で入社し、その華やかな雰囲気から受付嬢に抜擢された。会社の顔として注目を浴びる第一線「受付カウンター」の仕事は、毎日が緊張の連続であったが、持前のおおらかさと屈託ない笑顔で乗り切り、「受付城の姫君」と呼ばれて取引先からの評判もよかった。美紀のフレッシュな笑顔の挨拶を楽しみにする社員も多かった。
いい受付嬢が入ったもんだなあ、これで若い社員が活気づいて会社もいい雰囲気になるし・・・
と、健介は美紀を受付嬢にうってつけの人材だと高く評価していた。彼は既に会社の中核を担う立場にいたため、その目線で美紀を見て将来を頼もしく思っていたのである。 ところが、受付業務にも慣れたある日、美紀は重大なミスを犯してしまった。健介宛の書類を発送用ボックスに入れてしまったのである。美紀だけのミスではない、他の受付嬢からの引き継ぎにも問題があったのだが、ほかの発送書類に混ざってしまったのを気付かないでボックスに入れたのは美紀だった。正常に健介に渡っていればその日の午後一番で取引先と交渉が立つはずだったのが、アポのタイミングを逃してしまい、交渉に重大な支障をきたしたのである。 美紀は自分の不注意を深く反省し泣いて謝った。健介は日頃の美紀の仕事ぶりを評価していたし、美紀だけが悪いわけではないことは承知していたので、業務内容の確認をするよう指導した。それから、 「失敗は誰にでもあることだからね、以後気をつければいいから。あまり気にしないようにね。」と美紀の肩をポンポンと軽くたたいて慰めた。
だが、そのことがあってから美紀の笑顔に元気がなくなっていった。ミスを恐れ必要以上に神経質になってしまったのである。おおらかな表情がおどおどした表情に変わり、美紀らしい華やかさが消えそうだった。 健介は、ミスが出るよりも美紀らしさがなくなっていくことに心を痛めた。
「また以前のような笑顔になってくれればなあ、せっかくの人材を潰すようなことがあってはもったいない、なんとか育てていきたいものだ」
そして、健介の部署の飲み会に受付嬢も誘ったのである。
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