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不確かなもの「愛」
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第7回
7
健介にとって、この2年間は、それまで彼の生活を形作っていた基本のパーツが崩れたということを実感する日々だったと言える。その最たるものが食事で、それはもう限界に来つつあった。 食習慣とは恐ろしいものである。毎朝食べていた味噌汁が食べられなくなって、何かが体の中でカラカラと渇いてきていた。 外食が圧倒的に増えたこともその渇きに拍車をかけた。かつては、朝にご飯とみそ汁を食べ、昼は愛妻弁当を、夜もご飯とみそ汁に消化のいい手料理を食べていたのが、今は、朝がコーヒーとトーストに昼は外食、夜もファミレス風と、健介にとっては激変を絵に描いたようなものだった。 だが、彼は美紀に食事についてどうこう言えなかった。口に出してしまうと何かとんでもないことまで言ってしまいそうな自分が怖かったのだ。彼は、やがて夜遅く帰宅するようになった。
健介は夜はどうしても味噌汁が食べたかったのだ。帰りに小料理屋に寄り和食の味を求めた。由香利の味付けとは違うがそれでもほっとできた。そして、ひとりで味噌汁をすすりながらかつての食卓を懐かしむ日々がだんだんと増えていったのである。
彼の胃袋は長年の味を忘れていない。当時は全く当り前のこととして気にもならなかった食事だったが、それらのひとつひとつが彼のために手をかけて作られた料理だったということを、今しみじみと思いながら小料理屋の味を噛みしめている。
由香利はどうしているんだろう、まさか誰か他の奴に味噌汁作ってるなんてことはないよな、そんなことになっていたら・・・と考えるだけでも健介はムカついた。もうそんな位置にはいないしそんな資格も全くないというのに・・・。
せめて美紀にもう少し才覚があればというところだろうか。だが、もともと結婚を考えて付き合いだしたわけでもない相手なのだ。彼の方から言い寄ったわけではない。ただ、目の前に美味しそうなご馳走が来たと言えばわかるだろうか。彼はちょっと手を伸ばしただけのつもりだった。
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