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不確かなもの「愛」
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第4回
4
「『俺たちの由香利先輩』・・・か。」
山下の言葉を思い出して、健介は口にした。 すると、ぐわんと懐かしい光景が脳裡に浮かびあがってきた。もう15年以上も前のことなのに、くっきりと浮かび上がってきた光景に、健介は自分でも驚いた。
俺たち新入社員の前に凛と立って研修を進めた「由香利先輩」だった。ファンクラブを作ってみんなで騒いだっけ。俺は取り巻きのひとりだったんだよな。「大好きな先輩」が「妻」になった10年間が夢で、今は夢から覚めたのかもな。健介は、夢を見続けることができなかった自分を恨めしく思った。
健介と由香利は2年前に離婚した。原因は健介の浮気で、浮気相手が妊娠したことが、離婚を決定的なものにした。ふたりには子どもがひとりいた。その子は亮という名の男の子で、当時10歳だった。由香利が引き取り親権もとった。健介は、二人に家を譲り、自分が出たのである。 健介の浮気相手は、現在の妻の美紀である。妊娠が発覚したとき彼女は産むと言って譲らなかった。そして「結婚してほしい」と泣きすがってきた。できなきゃ死んでやると半狂乱になってわめいたりもした。健介は決断できなかった。美紀と結婚するということは由香利を失うということ、その現実を受け取る覚悟ができていなかったのである。 しかし、事態は、健介に厳しい現実をとことん突きつけてきた。由香利に告白し、離婚成立、その後美紀と再婚、美紀の出産と、この2年間が怒涛の如く過ぎ去ったのである。 「俺はなにしてんだろ?」夜空を見上げ溜息をついた。
由香利に飽きたとか嫌になったとかというのではない。大事に守ってきたはずの宝物を手を滑らせ落としてしまったのである。俗に言う「魔がさした」のだが、健介はその魔に翻弄されてしまったのである。
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