美紀は主婦に向かないのかもしれないと思った。女性というものは、誰でも家庭に入ればそれなりに家事炊事をこなせるものだという思い込みが、健介にはあった。
前妻の由香利はバリバリのキャリアウーマンだったにもかかわらず、家庭に入ってからは、料理に腕をふるい、家の中をいつもピカピカに磨いていた。アイロンがけも完璧だったし、ズボンもしっかりプレスしてくれたし、健介は何もする必要がなかった。
家に帰れば、ベストタイミングで出来立ての料理が食卓に並んだ。これは、お庭で作ったトマトなのよと自慢げに語ったり、魚市場でおまけしてもらったのとVサインしてみせたり、由香利自身が主婦を楽しんでいるようでもあった。
健介の脳裏に無意識に刻まれている主婦像は、長い間見慣れてきたエプロン姿の由香利だった。女だからと言ってみんながみんな家事に有能なわけではないんだと、今更ながら当り前のことに気づいたのである。
美紀は経験が少ないからなあ、由香利と比べちゃいけないよなあ。しかしなあ・・・料理はもう少しなんとかならないものか?専業主婦だろ、なにやってんだよ!
いやいや、やめよう。そのうちに慣れてくれるさ
と慰めるように、健介は自分に言い聞かせ、食後のコーヒーをすすった。
「あなたって、離乳食のこともわかるのね。いいパパなのねえ。」 美紀は素直に感心してくる。
「あ、ああ・・・」 健介は面映ゆくなった。それは、由香利が毎日一生懸命工夫して作ってたからさ、と心の中で呟いた。ああまた、由香利のことが浮かんできた・・・俺は、最近、由香利のことばかりだなあ。どうしたんだろ?自分でもわからない自分に健介は当惑していた。
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