Warning: Unknown: Unable to allocate memory for pool. in Unknown on line 0 Warning: session_start(): Cannot send session cache limiter - headers already sent in /var/www/htmlreviews/author/11592/11432/17.htm on line 4 不確かなもの「愛」
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作品名:不確かなもの「愛」 作者:森 聖湖

第17回   17
 健介は25歳で5歳年上の「由香利先輩」と電撃結婚した。社会人3年目の彼の新婚生活は2DKのアパートからのスタートだった。
 結婚後まもなく亮が生まれ、由香利は子育てのために主婦業に専念することになった。由香利は今までのキャリアを惜しげもなく捨てて、それまで仕事に打ち込んできた集中力を家事に発揮した。
 健介の給料を上手に使い、できるものは全部手作りで家族のための家をつくった。健介にとっては文字通りの「狭いながらも楽しい我が家」だったのだ。
 彼は由香利と亮のためにマイホームを手に入れたいと思いがむしゃらに働いた。営業成績は常にトップを走り、営業部のホープと呼ばれるようになり、将来を期待されるようになった。そして、健介の親からの援助も手伝って30歳でマイホームを手に入れ、異例のスピード出世も果たしたのだ。
 健介の人生は順風満帆だった。由香利と亮のいる食卓に何の不満もなかったはずなのだ。ただ、時折、自分がもうかつてのようなエネルギッシュな自分にはなれないだろうことにさびしさのようなものを感じた。がむしゃらに突っ走ってきたあとの虚脱感とでも言えよう。健介は一番欲しいものを手に入れた後の自分を持て余していたのかもしれない。

 もっと欲しいと手を伸ばせば、手に入るだけのところにそれはあった。手に入れた快感を忘れられず更に求め、失うものの存在を考えられなかった愚かさ。
 
 彼は自ら最も大切なものを失ってしまった。穏やかなあの笑顔も、日だまりの中にあるような食卓も、手作りの庭も家ももう彼のものではない。失ったものに見合うだけのものを手にしたのかと問われて素直には頷けない自分がいた。

 もし彼が、「絶対失いたくないものは?」と最初の段階で自らに問いかけていれば、それだけの冷静さがあったなら、このような事態を招かなかっただろうに。


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