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不確かなもの「愛」
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第16回
16
健介にとって美紀はなんなのだろう。遊びなのだろうか?
確かに美紀を愛しく思っていた。美紀と一緒にいるときは美紀がすべてだった。彼は美紀を見ると欲しくてたまらなくなる。彼の中の獣のスイッチがいきなり入ってしまうのだ。だが、美紀から離れると頭の中は由香利でいっぱいになる。行為が終わった後の健介の切り替えは速かった。
由香利に対して罪悪感はなかったのだろうか?
健介の中で由香利と美紀は別次元の存在だった。由香利の存在は美紀とは全く次元を異にしていた。較べようがない世界にある存在だったのだ。
由香利は美紀とは正反対、きゃしゃな体つきで手指もほっそりとして白く長く腰も細かった。彼はいつも手荒にしたら壊れそうな由香利をただやさしく抱きしめて眠りにつく。それは美紀と会った日でも同じだったのだ。 彼はちょうどいろいろ遊んだあとに一番大事なおもちゃを手にして寝る子どものようだった。
健介にとっては美紀も由香利も大事なのだ。彼からすれば美紀も由香利もいて自分がすべて満たされるのだからこんないいことはない。どちらも手にしていたいから、「浮気」とか「不倫」とかいう罪悪感を呼び起こすような言葉で表現したくない、そんなふうに彼は核心から逃げていた。
実は健介は由香利の妊娠が恐かったのだ。由香利は最初の出産のとき難産でずいぶん苦しんだ。出産に立ち会った彼はその苦しみを目の当たりにして辛くて辛くてたまらなかった。やっと生まれたかと思ったら由香利は意識を失った。血圧がどんどん下がっていく中で彼は由香利の名前を呼び続けた。
このまま目覚めなかったら・・・そんなことあってたまるか!そんなこと絶対だめだ!
彼は気も狂わんばかりに由香利の名前を呼んだ。
あのときの恐怖感が健介の脳裏にこびりついていた。もうあんな恐ろしい思いは嫌だ!由香利の苦しむ姿はもう二度とみたくない!その思いが彼を由香利との行為から遠ざけてきたのである。
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