だってどうしようもなく好きなんだもの、好きになった人に偶々家庭があったということなの、奪うなんてそんなんじゃないし・・・
美紀は自分の良心に言い訳をした。彼女は、自分は愛されていると、私達は愛しあっていると自信をもっていた。こんなに激しく自分を求めてきているんだから彼を独占しているはずだと思っていた。奥さんとはうまくいっていないに違いないと自分の都合のいいようにストーリーを作っていたのだ。
だが、やがて自分の位置がそんなに自信のもてる位置ではないということに気づいていった。
健介は美紀と関係を持つようになってから以前にも増してエネルギッシュになりどんどん仕事をこなしていった。美紀にはそれが嬉しかった。自分が彼を陰で支えているんだと自負していた。けれども、健介がどんなに実績をあげても、それはすべて彼の家族に捧げられる。実質的に彼の家族が幸せになるだけで、美紀との関係が進化するわけではなかった。 加えて彼は、ベッドでどんなに美紀を愛しても必ず家庭に帰って行った。こういう関係だから当然のことなのだが、デートの時間が常に限られていたし連絡方法も時間帯も限られていた。ふたりの関係を維持していくにはそうしなければならないだろうと、それは美紀にもわかっていたが、そのうちもっと一緒にいられるようにしてくれると期待していたのだ。だが、変わることはなかった。
私って彼のなに?こんなに愛しているのにどうしてもっと一緒にいられないの? 不安と焦りを感じながら、それを健介にぶつけることもできず苦しむようになったのだ。
いいわ、週末も祭日もクリスマスもお正月も全部譲る、でも、せめて私の誕生日だけはずっと傍にいてほしい、一年のうちのたった一日を私のためだけにいてほしい
美紀は切実にそう願うようになった。
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