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不確かなもの「愛」
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第13回
13
健介が既婚者だと知った日、美紀は早退した。誰とも顔を合わせたくなかったのだ。会社を辞めることも頭をかすめた。だが、入社して半年も経っていないのに辞めるなんて親には言えない。せめて健介と顔を合わせなくて済むところに異動できないだろうか?でもそうしたら課長は私のことなんか気にも留めなくなる、実は美紀にとってそれが最も耐えられないことだった。 この1か月近く彼女は悶々と過ごしてきた。自分のことなんてなんとも思っていないんだということが、健介が既婚者であるという事実よりも辛く、彼女を追い詰めていたのだ。美紀は情緒不安定になり欠勤が目立つようになった。 美紀の欠勤は傍からみると仕事上のミスから立ち直れないでいるように思われた。先輩の証言も手伝って、人事部は美紀の異動を検討しはじめた。美紀の人当たりの良さを評価していた人事は、美紀の地元に近いところの営業所に10月付で異動させることを考えていた。 美紀は自分ではどうにもならなくなっていた。実家に戻れば少しは楽になれるかもしれない、すべて忘れられるかもしれないと思った。忘れたくないけれど忘れた方が楽なのだ。
美紀の欠勤が連続して1週間になろうとしていたある夜、携帯が鳴った。
「美紀ちゃん、大丈夫かい?俺もどうしていいかわからなくて・・・」
健介からだった。
「あ、あの、私・・・あの・・・」
不意の電話に言葉が出てこなかった。
「私のことなんて・・・私のことなんて・・・」
美紀は電話口で泣き出した。
「ずっとね、気になっていたんだよ。今、名古屋なんだ。このところ出張続きで顔も見られなくて心配だった。泣かないでくれよ。」
「私・・・私・・・会いたいんです!・・・」
「美紀ちゃん・・・すぐには会えないんだ。来週まで名古屋なんだよ。」
「私・・・会いにいってもいいですか?」
「美紀ちゃん・・・」
その夜遅く、美紀は新幹線に飛び乗った。
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