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不確かなもの「愛」
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第10回
10
健介はその香りを貪りたい衝動にかられ、思わず美紀を強く抱き締めた。
「あ・・・ん」いきなりの強い力に我を忘れ、美紀は声をあげた。その声がまた健介を挑発したのか、美紀の耳たぶや首筋にキスの雨を降らせた。あまりの激しさに美紀はなんの抵抗もできなかった。むしろ、このまま身を任せてしまいたい気持ちになっていた。 「このままじゃ、君を電車で帰せないな。タクシーで送るよ。」 健介は自分のキスで乱れた美紀の髪や服を直しながら言った。確かに泣いたりもして化粧も崩れていたしタクシーのほうが無難だろうが、美紀の方は急に子ども扱いされたようで悲しくなった。だがここで不服を言えるような身分でもない。健介の拾ったタクシーでマンションまで送られた。 美紀の住むマンションはセキュリティ対策が行き届いている女性専用マンションだった。両親が愛娘のために契約してくれたのだ。健介は、「これなら安心だ」とまるで親のようなことを言いながら美紀を見送ろうとした。
「ここまで送っていただいてすみません。あの、お時間大丈夫ならお茶でもいかがですか?」
「え、あ、ああ、時間は大丈夫だけど・・・」
「私、そんな誰でもうちに入れるわけじゃありませんから。ちょっとだけでも休んでいかれた方がと思って・・・」
「ああ、ありがとう。じゃあ、水を一杯ね。」
健介は美紀に促されて部屋に入った。美紀の部屋は、標準的な女の子らしい部屋だったが、そこにも先ほどの美紀の香りが漂っていた。健介はまた衝動にかられた。今度はもっと強烈な力で奥からグンと突き上げてきたのだ。美紀は身を任せてきた。健介も、自分の中の「もうひとりの自分」に身を任せるしかなかった。 その「もうひとりの自分」は今までこんなふうに現れたことはなかった。健介は理性で自分をコントロールし、こんなに激しく女を求めたことはなかったのだ。
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