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作品名:星の語り手 作者:時野裕樹

第4回   神々の戦い その2 
 リューシャとパルティアルは13番目の神に名を渡すため、カゼルの大口へと向かった。彼らは旅の途中、人間族の漁師ロイドと巨人族の弓使いリンヴァスを仲間に加えた。

 ロイドはキュリセリアの北の海セーヴェル海の港町に住む漁師であった。彼はその手にする銛で、セーヴェル海を荒らしていた大鮫オロコを倒した町の英雄であった。
 彼は町を訪れた二人の旅の理由を聞くや、その志に感動し旅への同行を願い出たのであった。

 リンヴァスはその体の小ささと非力さのために、国から追放された巨人であった。彼はいつか自分を追放した仲間を見返すこと、そしてエルフ族達のような弓の名手になることを夢見て北の大地で暮らしていた。彼は3人と出会い、特にロイドの英雄的な過去に憧れ、旅に同行することにしたのであった。

 彼らはゼニスより送られた闇の軍勢を退け、ガルガオンより放たれた竜王ジェルニカを倒して13番目の神アゼの元へ辿りついた。

 アゼは冒険者達よりその名と役目を告げられると深い眠りより目を覚ました。そしてリューシャに自らの力の一部を託したのであった。
 リューシャの言葉は、相手に託したい意思と力を彼女の考えた名ともに紡ぎ、伝えることができるようになった。
 アゼはリューシャに力を与えると、万物の生み出す言葉が創り出した万言の海へと姿を消した。
 
 リューシャはその言葉を持って、パルティアルの纏いし外衣にクルエム、ロイドの錆たる銛にジーフスゲル、リンヴァスの使い古された樫の弓にインドラの名を付けた。
 クルエムは纏いし者をあらゆる災いから守る強靭な衣となった。
 ジーフスゲルは持ち手の命を削るが、万物を貫く最強の槍へと姿を変えた。
 インドラは持ち手に戦場より退がることを許さぬが、一矢万殺の矢を放つ恐ろしき弓となった。

 リューシャ達はアゼより得た力を用いて、キュリセリアに溢れる災厄を鎮めていった。戦乱を指揮していた者達は次々に降伏していったが、裁きの神ゼニスとその配下たる闇の軍勢は戦いを止めようとはしなかった。

 彼らはフルーエ山の山頂にある城へと篭もったゼニスを討つべく山を登った。

 闇の軍勢を退け、城へと辿りついたリューシャ達の前にゼニスは立ちはだかった。ロイドの命を賭した一撃も、リンヴァスの猛攻をも退けるゼニスを前に万策は尽きたかに思われた。その時、パルティアルはリューシャに己が身を依り代に新たな力を生み出すよう願い出た。

 リューシャは大いなる秩序と愛を願い紡いだ名、イルーシアをパルティアルに与えた。
 リューシアの言葉とパルティアルの肉体より生まれしイルーシアは、リューシャの愛の力とパルティアルの希望の力を得て、ゼニスを圧倒した。
 そしてその言葉より果て無き異世界「言葉の迷宮」を紡ぎだし、彼をそこに封印したのであった。

 キュリセリアの神々達の争乱はこうして終結を迎えた。
 この戦いで裁きの神の座と人の神の座が空位となり、原初の神エルネスは裁きの神の座にはイルーシアを、人の神の座にはリューシャを就けることにした。

 この後、新たな戦乱の火種となる事を避けるため、13の神々は徐々にキュリセリアの大地から離れていった。


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