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作品名:星の語り手 作者:時野裕樹

第3回   3
 マルセウスはやがて幾度もの新たな種の創造の失敗に疲れ、エルネスの創りし、世界の残酷さを嘆き悲しみながら深い眠りに付いた。

 それからしばらくたったある静かな夜。
 裁きの神ゼニスは闇の者達を率いてフルーエ山を下りた。これに気づいた光の神ケリュクは空に月を浮かべ、星達を散りばめて彼らを照らした。闇の神バゼはこれに怒り、その力をもって星々を大地に落とした。

 他の神々もこれに反応し、キュリセリア全土を巻き込んだ大きな戦乱が始まった。

 力の神ガルガオンはゼニスの側に付き、竜や巨人達を率いて大地を蹂躙した。正義の神オーゼルは彼らの前に立ちはだかり、その盾をもって彼らの侵攻を防ごうとしたが、力及ばずその命を落とした。後にその盾はエルフの賢者ソーラスに拾われることになった。

 大地の神カゼルと森の神ローゼリアはケリュクの側に立ちて闇の軍勢達と戦った。
 始め、森や洞窟の中に隠れていた闇の者達との戦いに苦戦したが、ケリュクより光の草フラニカを得て、これを植え、闇の者達を追い払った。
 カゼルはドワーフ達に作らせた武器や防具を戦士達に与え、大地の底より深紅の魔石エンセル(後に支配石と呼ばれる)をドワーフの中で最も強い戦士ボルボリに与えてこれを王とした。
 ローゼリアは一匹の巨大な赤狐リスカを獣達の王に、エルフの中で最も賢き者ソーラスを王として彼らを戦場に送った。

 水の神キルティアと人の神パルティアルは戦乱に加わることを嫌った。キルティアは水の者達を連れて水底の宮殿で戦乱が過ぎ去るのを待ち、パルティアルは人間達を連れて戦乱の禍の及ばぬ土地を渡り歩いた。水の者や人間達の中には神の下を離れ戦乱に加わるものもあった。

 戦乱は長きに渡り、大地は穢され、森は焼かれ、空は澱み、海は汚れた。それでも戦乱の世は終わらず、世界は滅びるかに思われた。

 戦争の行く末を案じた人間の娘リューシャは、パルティアルに自分とともに原初の神エルネスの下へ行き、救いを求めてくれるよう頼んだ。パルティアルはリューシャの願いを断りきれず、彼女とともにエルネスの下に行くことにした。

 幾多の苦難を乗り越えてパルティアルとリューシャはエルネスの下にたどり着き、救いを請うた。
 エルネスが二人に与えたのは13番目の神にその名と役目を伝えるという、新たな使命であった。

 13番目の神の名はアゼ。数多の言霊を従えて言葉と運命を司る神であった。


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