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作品名:星の語り手 作者:時野裕樹

第2回   2
 7番目の神はキルティア。清流の大甕を得て水と時の神となった。キルティアは他のどの神よりも生命持つ者を愛し、その愛には隔たりが無かった。
またマルセウスより魚族、トリトン、マーメイド等の様々な種族を得てそれらを海や川、湖等に住まわせた。
キルティアはシルキアの泉の底に宮殿を造りそこに住むことにしたが、バルゼ海、ファルトリーヌ川等に自らの子である水人(すいじん)を住まわせて他の種族との関係を良く保つことも欠かさなかった。

 8番目の神はオーゼル。正義の盾を得て戦いと救いの神となった。彼は種族同士の戦いを避けられないものと考え、戦士達の犯した罪を赦した。また死後の審判の時には、その者の信念と尊厳により裁きの大鎌からかばう神として、多くの者から慕われる神となった。

 9番目の神はローゼリア。神樹の槍を得て森と獣の神となった。
ローゼリアはしばしば神樹の槍の力を用いて、世界中を草木で覆い尽くそうとするため、カゼルやキルティアと衝突が絶えなかった。
 ローゼリアはマルセウスより様々な草木や獣、獣人族やエルフ族を得て自らの森に住まわせたが、獣や獣人達の中には森での生活に満足せず、荒野へと出て行くものもあった。また、ローゼリアは好き勝手に森を広げた挙句、ろくに管理をしなかったため、その暗がりは闇の者達の良き隠れ家となってしまった。

 10番目の神はガルガオン。金剛の牙と爪を得て力と支配の神となった。ガルガオンはマルセウスに竜族と巨人族を渡すよう求め、マルセウスも他に彼らを抑え得る神がいないことから喜んでガルガオンの求めに応じた。ガルガオンは竜族や巨人族を率いて各地を回ったが、彼らは世界中のものを喰らい尽くしてまだ足りぬといった様子であった。ガルガオンは大いに困り、いつしか彼らの勢いを止めるべく大きな戦乱を望むようになってしまった。

 11番目の神はパルティアル。夢見の竪琴を得て人間と希望の神となった。パルティアルは竪琴の音色とともに人間達を豊穣の大地パロトル平原へと導いた。人間達は初めのうちはは力を合わせてよく働いたが、しばらくするとそれぞれが利益や権力を求めて互いに争うようになった。さらに森を出てきた獣人達もその争いに加わると、パルティアルがその争いを治めることはほとんどできなかった。
 各地を飛び回ったパルティアルが心身ともに疲れきって、アプロデの丘で休んでいたとき、彼の下に一人の少女が現れた。
 彼女の名はリューシャ。パルティアルは人間族の少女に恋をしてしまった。

 12番目の神はゼニス。裁きの大鎌を得て冥府と法の神となった。
 しかしゼニスはこの役目を不服に思い、エルネスを大いに憎んだ。
 ゼニスはキュリセリアの西の果てにそびえるフルーエ山の頂上に城を築き、その周りを深い闇で包んだ。そして闇の者達を密かにそこに集め、復讐の刻を待った。

 13番目の神はエルネスの下に集まることを忘れ、その名と役目を知ることができなかった。彼はキュリセリアの遥か北カゼルの大口と呼ばれる大地の亀裂の奥深くにその身を横たえ、眠りについてしまった。

 こうしていくつもの歪みを抱えたまま、13の神々達による統治は始まり、世界は大きな戦乱へと巻き込まれていくのであった。


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