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作品名:星の語り手 作者:時野裕樹

第1回   1
 世界は混沌より始まった。

 原初の神エルネスはその言葉を以って世界に秩序を生み出すことにした。
 エルネスの言葉は混沌の内より光の杖と常闇の衣を紡ぎ出し、光の杖を振りかざすと世界に光と昼が生まれた。
 常闇の衣を世界に纏わせるとそこに闇と夜が生まれた。常闇の衣は世界を覆いきることができず、その狭間が朝と夕になった。
 エルネスは同様にして大気の翼、黒土の大槌、獄炎の剣、清流の大甕を混沌の内からすくい出し、その力より天と地、大気と風、炎と水がこの世界に生まれた。

 エルネスは世界にキュリセリアの名を与えた。希望と平和を願いて付けられたその名は世界を美しく彩った。この時世界はまだ全てが鮮やかであった。

 その後、エルネスは世界に様々な魚や草木、獣達を生み出した。エルネスは彼等にこの世界の名と彼らの存在が何であるかを教えた。彼らはそれを知るとすぐに世界中に広がっていった。
 しばらくすると彼らは争いを始め、その激しさにエルネス一人の力ではそれらはどうすることもできなくなった。エルネスは慌てて、13の神々を生み、世界を彼等に統治させることで、平穏を取り戻すことにした。
 
 エルネスは生み出した13の神々をユピアの園に集め、早く訪れた者から順に名と役目を与えることにした。

 1番目の神はマルセウス。エルネスより創造の力を得て神々の王となった。
 マルセウスは世界を生命で満たそうと様々な種族を世に生み出したが、その多くはキュリセリアの大地に適せず滅び、また或る者は生きるために大きな枷を負った。彼らは日の光の下で生きることができなかった。
 枷を負いしものは闇の者となりてマルセウスと自分たちの生まれし世界を恨んだ。

 2番目の神はケリュク、エルネスより光の杖を得て昼と光を統べる神となった。
 ケリュクは醜い闇の者達を嫌い、その光の力で世界中を照らし出し、闇の者達を滅ぼそうとした。
 しかし、闇の者に同情したマルセウスにより、その試みは退けられた。

 3番目の神はバゼ、常闇の衣を得て夜と闇を統べる神となった。バゼは世界の事にほとんど無関心であったが、ケリュクとはその光と闇の領域を求めてよく争った。
 その争いは時に他の神々を巻き込むほどのものとなった。

 4番目の神はアエル。エルネスより大気の翼を得て風と大気を統べる神となった。
 アエルはマルセウスに請うて、翼を持つ鳥族や有翼族を得て空を満たした。
 また気まぐれに風を起こしては他の神々や種族を困らせる悪戯者であった。
 
 5番目の神はカゼル。 黒土の大槌を得て大地と鍛冶の神となった。カゼルは13の神の中で最も貪欲であった。遥か高みに上がろうとキュリセリアの山々を以って天を貫こうとし、大地に亀裂を走らせキュリセリアにある全ての大気と水を飲み込もうとした。しかし山々はアエルの起こす強風により削られ、ケリュクの雷鳴によって崩されてしまった。キュリセリアを満たす大気と水もカゼルの思うより遥かに多く、カゼルは自らの持つ力の至らぬ事を憂うとともに、他の手段を持って自らの欲望を満たすことにした。
 カゼルはマルセウスよりノーム、ドワーフ等の種族を得て大地の下を巨大な要塞とし、鉱石を掘らせて武器を作らせることにした。

 6番目の神はドグ。獄炎の剣を得て火と破壊の神となった。ドグは他の神や種族との接触を嫌ったため、その住処を求めて世界中を放浪することとなった。大地の神カゼルはこれを見て、山の中奥深くにドグを住まわせることにした。ドグは大いに喜んでカゼルに業火の大窯を造ってこれを贈り、カゼルはこれをドワーフ達に使わせてより強力な武器を作らせることができるようになった。


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