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作品名:明日に栄光あれ 作者:yuu?

第1回   下準備


 これから銀行強盗をする。


 今は自分が暮らしている街からちょっと離れたところにいる。
 今年で28歳になるけど先日、不況の影響も相成って会社をリストラにされてしまった。
 だからかもしれない、なんかどうでもいいような気分になって、ちょっとだけ自暴自棄になった行動を起こそうとしている。
 さて、そんな自分が今から銀行に寄ろうとしているのだが、決してお金を卸すわけではない。奪いにきたのだ。
 今までだってさえ、生活が苦しかったのに、追い討ちをかけるような事態になってしまい、来月からの生活費がないのだ。
 昨日、布団の中で考えた。これからのこととかいろいろ考えてどうにかせにゃーならんと思った。
 そして出した答えは、自分の手元にお金がなければ、他人から奪えばいい。というものだった。
 神が自分を見放したのだから、悪魔になればいいのだ。まあ、神も悪魔も信じてないけどね。救ってくれねーし。あ、救えないのは今の自分か。
 まあそんなこんなで、今から銀行強盗をしようと、僕は思っている。
 目の前に見えるはどこにでもある、町の小さな銀行の支店。やや田舎であるため、人の少ないお昼過ぎの時間帯で、お客の気配はない。
 状況はまさにうってつけだ。さあ、乗り込むぞ!
 その時、突入した時の状況を軽く頭でシミュレートしてみた。
 銀行に乗り込む → 僕は拳銃を誰かに向けて「金を出せぇ!」はいストップ。
 拳銃持ってないので、このまま突っ込むと失敗する。これじゃあダメだ。そもそも拳銃ってどこで買うんだ? アマ○ンに売ってるの?
 とにかく拳銃の入手法を知らないし、もしあったとしても人を撃ったら痛いだろうし第一銃刀法違反だし……
 ふむ、これはいくつかシミュレーションをしてみる必要があるな。
 僕はいったん家に戻ることにした。



 家に戻った僕は軽くシャワーを浴び、冷やしておいたビールを持ってテレビの前に座った。野球の中継も始まっており、途中で買ったチーカマをほおばりながらナイターを観戦し、一口目のビールを飲もうとした時にお昼のことを思い出した。
「野球がいけないんだ。ビールがいけないんだ。忘れていたわけじゃない」
 そう言い聞かせながらシミュレート再開することにした。その前にビールを一口。
 ……ぷはぁ。そういえば、防犯カメラというものがあるんだったよな。だとしたら顔を隠さないといかんな。どうしよう?
 そういえばストッキングをかぶれば誰かわからなくなってたな。その時、テレビでアイドルがストッキングをかぶっていた時のことを思い出した。あれはひどかったな。ブサイクってもんじゃなかったもの。
 しかし僕はストッキングなんて持ってないからな〜。そうだ、ル○ンかなんかで見たのを思い出した。黒いタイツみたいのに目のとこに穴を開けてかぶればいいじゃないか。でもタイツなんて持ってねー。トーキューハ○ズ行けば売ってそうだけどそこまでする必要あるかなぁ。
 あ、顔が隠れればいいんだからタオルでも巻くか、そう思い試しに巻いてみる。意外と顔も隠れるからいけそうだと思った。よし、突入する時はタオルを巻こう。
 さて、後は何がひっつよ〜かな〜っと。ビール飲んでちょっといい気分になってきた。弱いのに酒を飲むなんて間違ってるかな。いいや何も間違ってない。
 むしろこのまま強盗に行っても成功しそうな気がしてきた。いやいやまだ早い。
 そうそう、武器も持たずにどうやって脅すというんだ。
 しかし武器なんて何にすればいいんだろう。銀行強盗なんて初めてだからどうすればいいかわからない。銀行強盗のプロフェッショナルにやり方を聞くこともできない。そもそもプロなんているのか?
 拳銃なんて持ってないし……そうだ、ナイフなんてどうだろう。我ながら冴えてるアイデアだなと思う。刃物を使って脅せばいいじゃないか。
 お酒の力のせいか、少しだけ気が大きくなっているのかもしれない。まあ、まだ(自分的には)酔っ払っちゃいないけどね。
 僕は立ち上がり、刃物なら別にナイフでなくてもいいかと思って台所に行った。そして先日買った料理用のはさみを持ってきた。
 ちなみに包丁は使えないので持っていない。今までの料理は全てはさみで行っている。カップメンを考えた人は偉いと思う。
 タオルとはさみを目の前に置いた。後はなにが必要だろうか。再び眠そうになっている頭でシミュレートしてみる。
 突入 → はさみで脅す → お金をもらはいストップ。お金を入れるカバンが必要だ。
 そこで大泥棒ルパ○を再びお手本にする。ジュラルミンケースと次元のシケモクとふじこちゃんの胸が思い浮かんだ。
 自分はタバコが吸えないので、とりあえずシケモクは必要ない。ジュラルミンケースは持ってない。ふじこちゃんの胸は大きくていいなあ。あれは反則だぜ。自分も女であんなナイスバディーなら、きっと美貌を武器に強盗に及ぶだろうな。
 何を考えてたんだったっけ? そうだカバンだ。どうしようか。とりあえず、旅行用のカバンにしよう。持つところが伸びて持ち運びも楽そうだし。これならたくさん入るな。
 やばいな。なんかこれだけでもう成功しそうな雰囲気じゃないか!
 それで満足した自分はそれらを横にどけて、缶ビール片手に再びナイター観戦をすることにした。



 次の日の朝。枕元に意味の分からないものが散乱しており、しばらくぼんやりとそれらを眺めていた。
 タオルとはさみと旅行用カバンを前にクエッションマークを並べていたが、まあいいかと思い、顔を洗い、歯を磨き、朝食のパンを焼きながらコーヒーの支度をし、食べ終わってさあ会社に行こうとした時、リストラされたことを思い出した。いつもの週間で身支度してたけど、こんなに早くに起きなくてよかったんだったことを思った時、銀行強盗を企ててたことを思い出す。
 あらためて用意した道具を見ると、昨日はなんでもできそうな気がしたのに、なんとも頼りない気がしてならなかった。せめてもうちょっとましなものを用意すべきだと考えた。


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