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作品名:灰色の鳩 作者:りんね

最終回   灰色の鳩
 僕の名前は鳩村良和。
 争いや揉め事を嫌い、平和を愛し平和をよしとする。名前の通りの男だ。
 だが、男女問題が絡むと話は別だ。

 僕は同僚で社内一の美女、水城さんに密かに恋焦がれていた。同期で他の部署の相馬もまた然りだった。
 十人並みの容姿で仕事もぱっとしない僕と違い、男前で仕事もできる相馬は女子社員にモテモテだった。例外なく水城さんも相馬に惚れていて、秋の社員旅行をきっかけに二人は恋愛関係に陥った。
 元々水城さんのことは高嶺の花で叶わぬ恋だと思っていたが、相馬とくっつくのは面白くなかった。相馬は女癖が悪く、他にもつき合っている女性が数人いると自慢げに僕に話していたからだ。
 一途でプライドの高い水城さんがこのことを知ったら?
 そんなことを考えながら、ある日の夜、相馬を尾行した。そして、彼が他の女性と繁華街の裏通りにあるラブホテルに入るところを密かに写真に収めた。
 翌日、帰り際に水城さんがまだ外回りから社内に戻っていないことを確認してから、例の写真を入れた茶封筒をそっと彼女のデスクの上に置いた。

 それから、三日経つが相馬も水城さんも依然として無断欠勤をしている。二人とも自宅にもいないし、連絡もまったくつかないらしい。社内――特に二人が交際していることを知っている社員の間でどうしたものかと心配の声が上がっている。
 例の写真を見てショックを受け激怒した水城さんが不穏な行動に出たのではないだろうか?
 ここ最近、男女間の痴情のもつれによる事件が多いし……。
 そんなことが頭をよぎり、些か不安になってきた。
 僕はただ相馬と水城さんが別れてしまえばいいと画策しただけなのに……。

 僕は名字に平和の象徴である鳩という字がつく通り、平和を愛する男だ。
 だが、男女問題となると話は別だ。
 


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