命を結ぶ境界線の端を彼は歩いていた
どちらに転んでも構わないとも思っていた
そんなとき ひとりの少女に出会った
彼女は泣いていた
境界線の端っこで
そのまま通り過ぎようともしたが なんとなく足は止まった
声をかけようにも 声のかけ方がわからない
ただ少女を見つめていた
彼女は泣いていた
彼はそれをずっと見つめていた
やがて彼女は眠った とても安らかな顔だった
すこしだけその寝顔を見ていたくなり 彼もその場に横になった
いつのまにか眠っていた
目が覚めると少女はいなかった
なぜかすごく切ない気分になった
そうそれは悲しみだった
命を結ぶ境界線の端を彼は歩いていた
どちらに転んでも構わないとも思っていた
ただあの少女のことを思い出すときがあった
そんなとき 歩く先に大きな岩があった
とても大きな岩だった
先に進めないのでとりあえず彼はその場に座った
どうしたらこの先に行けるだろうか
彼は考えたがいい案はうかばず 時間だけが過ぎていった
遂に彼はその岩を思い切り殴った
当然 岩はびくともしない
だが彼はおかまいなしだった 何度も 何度も 何度も 何度も 殴った
先に進めないのがひどく嫌だった
そうそれは怒りだった
命を結ぶ境界線の端で彼は選択を迫られていた
どちらに転んでも構わないはずだった
だけど いざどちらかを選ぶとなり彼は苦しんでいた
わからなかった
どちらに進むべきなのか彼にはわからなかった 選べなかった
彼は思い出していた 少女の事を思い出していた
彼女は泣いていた
彼はそれをずっと見つめていた
彼は思い出していた
ふと地面をなにかが濡らした
それは涙だった 彼は泣いていた いつのまにか泣いていた
そして歩いてきた道のりを知った 幾つもの思い出を持っていた事を知った 少女の涙の意味を知った
彼女はどちらの道に進んだだろう 自分はどちらの道に進むのだろう
そんなことを彼は考えた
少女もおなじことを考えたのかと思うと不思議と心が楽になった
ただそれと同時に彼女とは別の道に進む予感がした
なぜかそれは確信できた
やがて彼は眠った とても安らかな顔だった
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