この惑星と同様に火星タカワルハラでも地球についての歴史文献は皆無といって良い。 20世紀以降より盛んに記録された音声と映像も殆ど現存していないと聞かされている。 それは過ぎ去った忌まわしい暗黒の歴史でしかないのだと・・・・・・・・・・。 多くの思想家たちが残した文献はあっても、その歴史的背景に触れることすら出来なかった。 私たちは、あらゆる文化と文明が否定され、一切の書物と思想的活動の途絶えた時期だと教育されてきた。
ネットで世界史を調べ直してみたが、やはりここでも21世紀末から百年前後の記録が空白になっている。 もし国立図書館に行くことが可能で、閲覧できたとしても同じ結果に終わるのは明白だろう。 寝る暇も惜しんで古臭い端末に齧り付いていたが、この一週間の努力は無駄骨折りだったらしい。 あのハヤトが言っていたように、誰かに頭を下げない限り謎を解くことは不可能なのかも知れない。
大きなパーティーは月に二回ほど催されるらしいが、この屋敷は催しがなくても毎日多数の人間が出入りしている。 邸内のゴルフ場とカジノを利用する客や、その他目的の分からない人たちが毎晩のように乱痴気騒ぎを繰り広げているのだ。 中には高学歴の物知りもいるだろうし、口の軽い人間も少なからずいるに違いない。 彼らと接するための仲介役は・・・・・やはりマリアに頼る以外に方策はないか。
彼女は庭園で仲間の女の子たちと戯れているか、カフェバーで楽しそうにお喋りをしている姿をよく見かける。 しかし先日のパーティー以来、私と擦れ違ってもプイと横を向いてしまう様になってしまった。 屋敷内での自由は与えられているとはいえ、囚われの身である私には他人の感情に配慮する余裕までは持てないのだが。
この惑星では、利用出来るものは全て利用すると割り切って考えた方が良いのかも知れない。 腹を割って話し合えば彼女もきっと理解してくれる筈だ。 私はあの夜、彼女のご機嫌を損ねているので、直接話しかけたら逃げ出して二度と会えなくなってしまう恐れがある。 そこで、いつも私の身の回りの世話をしてくれているメイドに取り次いで貰うようにした。
待つこと30分、彼女からの返事は今夜七時に例のピアノバーで会っても良いとの事だった。 まだ午後五時前だが、他に用事でも出来るといけないと思い直ぐさまバーへ向かった。 ところが店内へ入ると、驚いたことにこの間と同じ小さいカウンターにひとりポツンと座っているマリアの姿がある。 彼女も私に気付いたので手を振りながら歩み、遠慮がちに席を一つ置いて腰掛けた。
『久しぶりだね、変わりなかったかい。』
「たった一週間でしょ。」
『私は永いように感じたんだけど。』
「どうして隣に座らないの。」
『約束の時間よりも早過ぎるので、他の人と待合せしているのかと思ったんだけど。』
「じゃあ他のカウンターに座れば良かったんじゃない。」
『聞いて確かめないと分からないし、食事を摂る予定かも知れないし・・・・・・』
「ここは食堂じゃありませんから。」
『じゃあ何でこんな早い時間に・・・・・・・・・』
「疲れてるからお茶を飲んで寛いでいたのに貴方が邪魔しに来た。」
駄目だ。完全にお冠状態で甚だしくツンケンしている。 しかも飲んでいるのはお茶などではなくカクテルではないか。
『お酒なら私も付き合うよ。』
「バーテンさん、お客様にアースクェイクお願いね。チェイサーはバーボンの水割りダブルで、ウフッ。」
『実はね、私は歴史研究者なんだが、この地域の詳細な歴史について研究しているとどうしても壁にぶち当たってしまう。』
「ふ〜ん。」
『高名な歴史家や偉大な歴史の探求者たちは皆、世界各地を駆け巡って人々から貴重な言い伝えや逸話を直接聞いた。 そしてその耳と目に焼き付けた事実を記したのが世界史の始まりなんだ。』
「へ〜。」
『私は歴史家の真似事をしているに過ぎないのだが、偉大なる探求者に倣って生涯を賭けた仕事を成し遂げたいと思っているんだ。』
「へ〜〜〜。」
『そこで君に折り入って頼みたいことがあるんだよ。』
「ふ〜〜〜ん。」
『この屋敷を訪れる人の中に、大学教授とか歴史に詳しそうな方がいたら是非とも紹介して欲しいと思ってね。』
「バーテンさん、お客様にアブサン・ストレートトリプルとバーボンダブルのチェイサーおかわりね、ウフフ。」
『いや別に地位は高くなくても、君がこの人は学識があって物知りだと思っている人物だったら誰でも構わないんだけど。』
「物知りだったら貴方の目の前にいるわよ。マリアは冠木さんが鈍い方だってこと知ってるの、ウフッ。」
『歴史学に限定しての話なんだけど。』
「それで今日になって新たに、冠木さんが嘘吐きだと学習したの、ウフフフ。」
『それは心外だなあ。大真面目に話してお願いしてるのに。』
「さる偉大な歴史家はこの様に仰いました・・・・・・・ 生真面目な人間が悪の存在を許し、生真面目な人間故に不正の温床を作り上げた・・・ それは生真面目であるが故、悪に立ち向かう事も善悪理非の判断も敵わなかったからである・・・・・とか。 或いは・・・ 善人の仮面を剥ぐとそこには悪魔の仮面があり、更にその下には幾重もの善人と悪魔の仮面があった・・・・・ 善人とは悪魔の血に染まって生きる動物である・・・・ それは彼らが善人だからこそ何も成し得ず、人の道に背いて一生涯を終える運命であるからだ・・・・・とも。」
『君の神経が良く分かったよ・・・・・・・・・・・・私が馬鹿だった。』
「そんな言い種って・・・・・・・」
『じゃあ、縁があったら・・・・・』
マリアの術中に嵌まってしまい、強い酒を何杯も飲まされる破目となり完全にダウンである。 やはり絶対に他人を頼るべきではない。だから私は馬鹿だったのだ。 他人を信じて期待を裏切られた時、その者に対して憎悪の念を抱く事にもなり兼ねないからだ。
翌朝、頭痛と吐き気と共にいつもより早く目覚めてまったので、サウナへ行き酔いを覚ますことにした。 早朝のため誰もいない広いサウナルームにゴロッと寝転んで物思いに耽っていた。 冷静に考えてみれば私の一時的感情から自分で自分の首を絞め、八方塞がりにしてしまったのではないか。 もしかすると私は本当に鈍感で嘘吐きの愚かしい男なのかもしれない。 かつての同志たちも言葉巧みに誘い計画を強要したにも関わらず、一方的な思い込みから殺意を抱いて行き着いた所は・・・・・・
そこへ、ひとりの大柄な男がサウナ室に入って来た。この顔には見覚えがある。 ここへ連行されたあの日、地下室で取り調べに当たった乱暴な奴だ。 男は故意にだろうか、仰向けに寝ている私の頭の直ぐ隣に腰を下ろした。 しかし端末は持ってきていないので話をする必要はあるまい。この男も承知している筈だ。
「朝っぱらからサウナとは結構なご身分だな冠木。刑務所じゃあ月に一度シャワーを浴びるだけだって事を良く覚えときな。 受刑者は朝から晩まで強制労働に駆り出される。昼飯と夕飯にありつく為には一心不乱に働かなきゃあならねえ。 犯罪者に与えられる唯一の自由は勝手に餓死することだ。働かざる者喰うべからずってな。 ところでよう、お前は世話になってる御主人様に礼のひとつも言えねえ野郎なのかい。 オヤジさん、いやクロッカワー氏はお前の事をいつも気にかけて俺によく尋ねてくるんだよ。 監視カメラで見張ってるわけでもねえから、お前の言動や行動が読み取れねえんだ。 俺の言っている意味が分かるか。感謝の気持ちを忘れるなってことだよ。 今から六時間後の午前十一時に迎えを遣るから身支度を整えて待っていろ。 分かったな冠木。」
そう告げると大柄な男はさっさとサウナ室を出て行ってしまった。 奴は余計な脚色をしていたが、恐らくことづてを伝えるため来たに違いない。 監視してないなどとは信じ難いが、軟禁状態での緩やかな尋問があってもおかしくはない。 クロッカワーは痺れを切らしたのだろうか。私から何かを訊き出したい事は容易に察しが付く。 こちらも収穫を得られるかもしれないので精々楽しむとしよう。
そして午前十一時過ぎ、約束通り使いの男二人がやって来て屋敷の奥へ案内された。 長い通路の前で目隠しをされ左右に何度も折れた後、エレベーターに乗せられ地下深く降りてから目隠しを外された。 そこは前に連行されて来た時の雰囲気とは異なり、目の前には一面豪華な大理石造りの壁や彫刻が並び、静かな音楽も鳴り響いている。 ここからは綺麗なドレスで着飾った女性が案内役になるらしい。 女性の話によるとフレンチレストランでクロッカワーが待っているのだという。
少し歩いた所の正面に大きな格子模様の扉があるのだが、看板も何も見当たらない。 直前まで行くと扉は徐に左右へと開かれ、黒服二人が深くお辞儀をしている。 フロントの左右を見ると、フレンチには相応しくない和服姿の女性が数名いて深々と頭を下げている。 その女性のひとりに案内され広くてゆったりとした店内へ入ったが、更に奥のVIPルームに招待した主が首を長くして待っているそうだ。
その個室の前に立っている警備員らしき男が、右手と左手をモニターに翳して自動ドアを開けると更にドアがあり、私一人そこの狭い空間へ入るように言われた。 十秒ほど缶詰にされた後、目の前のドアは開かれ、そこにはテーブルに座るクロッカワーの姿があった。 私はここでの慣行に従い、取り敢えず深くお辞儀をする事にした。
「やあ、冠木くん、久しぶりだね。まあ挨拶はいいから、お掛けなさい。」
『パーティーには出席しましたので、それ以来ですね。』
「ああ、そうか。まあいいからいいから。」
このVIPルームにも黒服二人と和服の女性二人がいて、奥の方には専用の調理場があるのだろうか、微かにフライパンの音や火で炙るような物音がする。 クロッカワーの前のテーブルに着くと、不覚にもまた例のお辞儀をしてしまった。
「まあ固くならず気軽に最高級グルメを楽しんでくれればいいんだよ。」
『今日は何かお話でもあるのかと思ってました。』
「いやいや、大切なゲストを食事にお招きしただけだがね。」
『そうだったんですか。』
「そろそろ料理が運ばれて来る。フォークとナイフ以外は持つ必要がないから、その端末機はポケットにしまって置きなさい。 私が何か喋っても答える必要はないので、頷くか首を横に振るだけでいいのだ。」
こちらには喋らせないという新手の尋問だと受け取れば良いのだろうか。 クロッカワーの言ったようにワインに次いで、大きめの皿に小さく盛られた料理が続々と出てくる。 食事は昨日の昼食以来、酒以外は何も口にしていないのでマナー違反で少々品が悪くなっていた気がする。 しかし次から次へと料理皿の出されるこの国のフレンチとは、どの様な歴史的経緯があるのかなどとも考えながら。
「これは懐石フレンチ全席といってね、高級ワインを味わうものとして考案されたんだよ。 ワインは白・赤・ロゼと取り揃えてあるが好みにあったものを飲めば良いのだ。 人類が創造した至高の芸術品の一つがこの懐石フレンチ全席だといわれている。」
なるほど、私が今までにこの地で味わってきた料理とは異なる芸術性を感じる逸品であることは確かだ。 グルメ通の老人は料理が運ばれてくる都度、得意気にその料理の起源やら素材の生産方法などについて訴え掛けてくる。 しかし私とて使い慣れないフォークとナイフで料理の洪水に舌鼓を打ちながら、和服美女が次々とお酌するワインを飲み干さなければならないのだ。 極上の料理と酒と美女の連続攻撃で、老人の自慢話を聞いている暇もない。 そして急に口数の少なくなったクロッカワーは、時折私の顔を窺い何度も頷きながら満面の笑みを湛えている。 最後のメニューとなるケーキとエスプレッソコーヒーが供された時、再びグルメ老人は私に語りかけて来た。
「実はな冠木くん、これがデザートではないのだよ。」
『と、言うと・・・・・』
「まあ、ゆっくりコーヒーでも味わっていてくれ。」
そう告げるとクロッカワーは立ち上がり奥の方へ向かった。 手洗いにでも行ったのだろうかと思っていると、余り時間を置かずに戻ってきて、これからがデザートの時間だとニヤニヤしながら言うのだった。 いや、これからが本格的な尋問を始める時間ではないのだろうか。 私は大切なゲストであろう筈がないからだ。天国から地獄へ直滑降なのか。 そして店の奥の方に着いて行くとエレベーターがあり、店内にいた黒服二人を連れ立って更に地下深くへ向かった。 この黒服二人は老人のボディーガードのようだ。
「これから行く所はVIP専用の会員制クラブだ。君は自由の身なので眠くなったらいつ寝ても構 わないがな。」
『この敷地内では自由の身なんだろ。』
「その通りだが、凶悪犯罪以外は全ての権利が認められている。」
『それも敷地内の権利だな。』
「ああ、それからな、その端末機は必要ないので預っておくよ。」
『話をしてはならないのか。』
「行けば分かる。」
エレベーターは程なく到着し、下りるとそこは広いロビーになっており分厚そうなドアが一つだけある。 二人の黒服がドアを開け中に入ると、そこは照明が落とされていたので最初は何なのか判別出来なかった。 眼を凝らして良く見ると部屋の至る所に数十名のバニーガールいて、しかも片膝を着き両手を胸の前で合わせ頭を垂れている。 大きめのボックス席が三つしかない空間で数十名のバニーガールが仰々しくお出迎えなのだ。 クロッカワーは私を連れ、中央の席に陣取って店長らしき男に何やら指示をしている。 ここまで来てやっと尋問が目的ではない雰囲気だと理解出来た。 それに今日のクロッカワーの上機嫌ぶりは、一体どういった風の吹き回しなのだろうか。
ふと目の前のテーブルを見ると、深々とした大きなソファーに比べて小さ過ぎるのに気付いた。 相変わらずクロッカワーは私を見詰めながらニヤニヤしている。 そこへバニーガール達が大きな皿を手にして現れ、ソファーの左右に二人、その下に二人づつが両脚を一方に揃えた格好で侍り皿を差し出すのだった。 更にもう一人グラスを持ったバニーが、私の両足の間に割って入る形で両脚を同様に揃えて侍り、グラスを両手で掲げている。 クロッカワーの方を見遣ると同じ配置で、ここには計十名のバニーが侍っているのだ。
老人はブランデーグラスを揺らしながら既に飲み始めているので、私もバニーが支え持つグラスを手に取り飲むことにした。 それは飲みたいと思っていた水割りだったので一気に半分ほど飲んだ。 すると真ん中にいるバニーが、微笑みながらグラスを欲しそうな仕種をしたので渡すと、即座に他のバニーが新しい水割りを運んでくるのだった。 そして私が食べたいと思っていた料理が、左右から箸とフォークを用い口元まで絶妙のタイミングで差し出されてくる。 不思議なことに余り好みではない生ものや、それに近い料理は皿の上を見渡しても一切ないのには驚かされた。 やはり厳しい監視の眼の下で個人データを収集し分析されているのだろうか。
そういえば先程からクロッカワーが何も話をして来ず、少々不安気になっていた。 すると、バニーたちと楽しそうに会話をしていたその老人は、思い出したかのように私の方に視線を向け話し掛けてくるのだった。
「どうだね冠木くん、この娘達は。これもまた神が創造した至高の芸術品と言っても良いのではないかな。 この娘達は単なるサービス業従事者ではなく神に選ばれし者達なのだ。 神の仮の姿として地上に降臨したのが上帝であることは言うまでもあるまい。 君が今口にしている酒や料理も偉大なる上帝からの有り難き賜り物だと肝に銘じるのだ。 地下水と海を汚染し尽くし、食料の確保も動植物の生存も不可能な状態で君たちは火星へ逃げて行ってしまった。 悪魔の呪いにより死に瀕した人類を救われた方こそ、神が人間の姿となられた上帝であるのだ。」
遂に始まったか。しかし端末を奪われてしまったので言い返す事も出来ない。 私は身振り手振りで端末を返すよう訴えた。
「いや、君は只ひたすら私の話を聞いていればいいのだよ、冠木くん。 私が間違っていると考えるのも君の自由なので、そうであればその様に考えるだけで済むのだ。 君は洗脳されているので何を言っても無駄なのも充分に承知している。 同様に君がこの国で情報収集をするのも破壊工作をするのも無駄な努力に過ぎない。 神など存在しない?自分は洗脳などされていない?、と言うのかね。そう信じ込ませるのが高度な洗脳ではないのか。 水の汚染は我々がやったと言いたいのかね?。犯罪者は必ず逃走するとだけ言って置こう。 私が読心術を?、いや君の考えていることは全て手に取るように分るだけだよ。 だから端末機は必要ないと言ったではないか。その意味がお分かりになったかね。 この空間では君は従順な奴隷に過ぎない事を。」
確かに私が頭に思い描いている言葉を完全に読み取られている。 この空間?・・・・この部屋が関係している・・・・・・・・・ そんな馬鹿な。我々ですら開発を断念した高度なブレーンポリグラフ装置など存在する筈がない。
「君には失望したよ、冠木くん。君はもう少し賢い人間だと信じていたんだがね。 敵味方を問わず、有能な者であれば付加価値が高いが、無能な者は生きている資格もない。 目が虚ろのようだが、気分でも悪くなったのかね。だから寝ても構わないと言って置いたではないか。 さて、餞別代りに私から心ばかりのプレゼントを差し上げたいのだが、何人でもテイクアウトして構わんのだよ。 うん、そうだよ、そこにいる美しい娘達だよ。ほう、そうかね、君は女性がお嫌いか。それは娘達もさぞ残念な事だろう。 君は無限の可能性を秘めている。また会える日を楽しみに待っているよ。 私は君の総てを知っている・・・・・・・・・おやすみ、冠木くん。」
目が・・・壁が、天井がグルグル回る。悪酔いするほど飲んではいない・・・・・薬を盛られたか。 足元もフラつき出した私は、黒服二人に両腕を支えられながら部屋まで辿り着いた。 眠いわけではないがベッドから起き上がる事もできない。
朦朧とした頭の中で、今まで遭遇した様々な出来事が走馬灯の様によぎって行く。 クロッカワーが勝ち誇ったように上機嫌だったのは勝利宣言を控えていた為か。 奴の口っぷりからすると、クラブに入る以前から私の心を読んで勝利を確信していたような気がする。
しかし高性能のハイテクマシンを駆使しているのなら、薬物など盛る必要が果たしてあるのかどうか。 いや待てよ。私の飲みたかった水割りが出された後、好みの料理を一分の狂いもなく勧めてきた。 店内に入る前から、料理まで準備万端整えて・・・・・やはり知り尽くしていたのだ。 そして彼女たちは指示通りに・・・・・いや、全員髪を上げていたのでイヤホンらしい物をしていれば直ぐ目に付く。 自分たちの意思のみで行動していたとしか思えない。
しまった・・・・クロッカワーが言っていた・・・・・・ 娘達・・・・・・・・神に選ばれし者・・・・・・ 迂闊だった・・・・・・テレパシー・・・・超能力者・・・・・
彼女たちは片手にグラスや皿を持つ傍ら、一方の空いた手を必ず私の体の一部に置いていた。 そして彼女たちの目はどことなく虚ろで視点が定まらないようにも見えたのだが。 薬物により力を得た身体の接触が発信源となり・・・・・いや、超能力など有り得るのか。 しかし私の心の全てを見透かされていたのは認めざるを得ない事実だ。 百歩譲って超能力であるとすれば、バニークラブに入る以前に何処で接触があって心を読まれたのかだ。 私の身体と誰かの身体が触れ合ったこと・・・・・酒・・・・薬物・・・・
パーティーの夜・・・・・・・・・まさか・・・・・・・
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