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作品名:ニーベルンゲンの指輪なのだっちゃん 作者:ブリブリ仮面

最終回   折伏屋ナンミョウ之介 The クマー



Once upon a time



或る村に神々の御使いが現れて、村人たちへこの様に告げられたのです。

さほど遠くない将来、人類の支配を目論む穢らわしき獣が出現するであろう。
人類は決してその獣に跪き、その獣が発する禍禍しい言葉に従ってはならない。

その獣を称え崇拝した者たちは皆、神々の怒りにより灼熱の太陽で焼き尽くされるであろう。
しかし、その獣と従者たちに従わず刃向った者たちも一人残らず抹殺されるであろう・・・・・・と。

その恐るべき預言は、ファティマの呪いと呼ばれ後世に語り継がれました。





「右や左の旦那様〜、どうぞお恵みを〜、この哀れなミイラにどうかお恵みしてっちゃん〜。可哀相なのはこの子に御座〜い、親の因果が子に報い、ペペンペンペ〜ン・・・・・・・・」

「こらっ、ミイラ男、見苦しいぞ。貰い乞食するくらいだったら青木が原に帰れや。」

「ルンペンプロレタリアも大変なお仕事ですわね、ホホホホホ。」

「あっ、御姐さんたち久し振りっちゃん。ドッグフードか魚肉ソーセージでいいからくれっちゃん。」

「お主なあ、バイト口でも探したらどうなんよ。幽霊屋敷とかあんだろうが。」

「あのね拙者は先月まで遊園地のお化け屋敷でバイトしてたっちゃん。でも全国の遊園地が違法化されて失業したっちゃん。」

「そうなんですの、ナンミョー之介の言う通りで、わらわの大好きなネズミーランドもお取り潰しになってしまったんですのよ、お姐様。」

「遊園地がなんで違法なんじゃい。」

「現クマー政権が、遊園地は不純異性交遊の温床となる場所だからとか言って禁止にして、映画館や喫茶店も禁止にして、プールや海水浴場も劣情を催す場所だからとか言ってレジャー施設は全部非合法化されてしまったのですわ。」

「そういやあ神社仏閣をぶっ潰して、そこいら中にクマー偶像神殿が出来てんのはそう云う訳だったんかい。」

「お姐様はカツアゲで稼いだ後、焼酎飲みながら一日中テレビ見てゴロゴロしてるから世の中の動きがお分かりにならないんですのよ。」

「おいっ、愚妹もも子、親しき中にも礼儀有りじゃぞ。ワシの情報源は全部テレビなんじゃけどな、そんなに悪い世の中でもなかろうが。」

「このウスラトンカチ。其の方のようなオタンコナスが多いから村民は為政者の為すが侭にされてしまうのじゃ。」

「お〜お〜、利いた風な事〜抜かしてんじゃあねえよ、貴公はいつから正義の味方になったんじゃ。」

「実を申しますと、お姐様、繁華街から鬱陶しいクソガキがいなくなるのは大賛成なんですのよ。でもわらわの遊び場所まで奪われては見過しに出来ませんの。」

「ちゅう事は、いよいよワシの出番が回って来た訳じゃな。この職業革命家である邪教院たか子の時代が到来したのじゃ。」

「お姐様が敵の凶弾に倒れるなんて絶対にあり得ませんわ。お姐様は豆腐の角に頭をぶつけない限り氏ぬ事は御座いませんのよ、オホホホホホ。」

「愚妹もも子よ、お主にも半分は責任があるからな、褌を締めて掛かるのじゃ。」

「あら、おフンドシなんて何とはしたない、もも子は興奮してしまいますわ。」





総ての発端となったのは進駐軍による青木ヶ原への戦術核攻撃でした。
数百回に亙る核爆発により発生した強力な電磁波と放射能で、地下の洞窟に封印されていた邪悪な獣が永い眠りから目覚めてしまったのです。
その邪悪な獣の正体とは、たか子さんともも子さん姉妹が発見した小さいツヅラに入っていたあのランプの精だったのです。
獣が目覚めた後、地獄女王蛇蝎院もも子さんがランプを擦って獣を外界へ出してしまった事は、数日後に因業寺閻魔様から聞いて初めて知る処となったのでした。

通名をツノガアラ人と名乗る邪悪な獣は、その獣の本名を666クマーと預言された強大な魔物だったのです。
この邪悪な獣の狂信者たちは狡猾な獣の教えに従い、奸智に長けた国際政治経済戦略を次々と繰り出して版図を拡げ、遂には世界中の国々を従属せしめてしまったのです。
人々はクマー教典『私怨の議定書』を忠実に実行するマスメディアの洗脳によって何も真実を知らされていません。

しかし預言に在る通り、その邪悪な獣に従っても逆らっても人類は滅亡してしまうのだと伝えられています。
別の預言書には666の支配は3年半後に終わると書かれてあるのですが、その預言そのものが666の謀略であるというクマー陰謀論が世界中に渦巻いていました。

因業寺閻魔様を本部長とする地獄ゲシュタポ隊は、必死で666クマーの御本尊を捕縛して地獄へ連れ去ろうとしましたが、誰に化けているのか皆目見当が付かないのです。
地球滅亡の日は明日に迫っているかも知れないのです・・・・・・・・・・・いいえ、もしかすると今日かも知れません。



「まあ最悪の場合、人間界が滅びたところで何ひとつ困らないのですわ。唯、わらわの遊び場所がなくなってしまうのが残念ですわね。」

「ちょ〜〜〜と待ったあァァァァァァァァ、余の辞書には情けは人の為ならずと書かれて居るぞォォォォォォ。」

「あら、独尊寺のクソお坊ちゃま、被爆して血迷ったのではありませぬか、ホホホホホ。」

「ワッワッワッ、わしこそが閻魔大王様なんだおォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ。」

「こらっ、因業寺、いちいち見得を切って出て来んでもええわい。貴殿が登場すると疲れるんだわ。」

「あのねえ、チミたち。人間界が滅亡すると地獄界も過疎化して破滅してしまうんだわ。他人事じゃないから必死にクマーを探してるのにチミたちときたらまったくもう。」

「やい因業寺、お主にばっかりはイイカッコさせんからな。今回はワシことジャンヌダルク邪教院たか子が活躍してヒロインの座を射止めるのじゃ。」

「わらわには秘策がありましてよ、因業寺閻魔殿。そなたにはどんな切り札があるのじゃ。」

「まあボクちゃんはチミたちには何も期待してないから邪魔だけはしないでちょ。」

「オホホホホホ、其の方が今までどの様な成果を上げたのか聞きとうなって来たわ。」

「ちょっと待ってね、これから地獄の焼き鳥料理道場の収録があるんで忙しいんだわ、ではまたいずれ。」

「フンッ、閻魔とは名ばかりの焼き鳥屋オヤジ因業寺。片腹痛むとはそちに与えられた言葉なんじゃわ、ホホホホホホ。」

「おいっ、愚妹もも子、貴公の秘策とは一体なんじゃい。」

「知りませんわ。策がないのも秘策の内ですのよ、ホホホホホ。お姐様はどうなさるおつもりですの。」

「まあな・・・・・・・・・・・気合だ気合だ気合だァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ。」

「あら・・・・・・・・・・・訊いたわたくしの方が馬鹿でしたわ。」


実は誰もが無為無策で手を拱いているのではなくて、誰もが脳内お花畑で深い思慮がなかっただけなのでした。



「いやワシはな、洞窟内で見た折伏屋ナンミョー之介ミイラの背番号が気に掛かって仕方ないんじゃ。」

「あのダサい折伏屋ナンミョー之介ですとな、ホホホホホ、お姐様もいよいよ焼きが回りましたわね。」

「いんや、ワシの身体に脈々と流れる、風魔くノ一の血がその様に言わせるのじゃ。」

「拷問にかけるのは簡単ですから、一応叩いてみるのも良いかも知れませんわね。どうせミイラですから。」


底意地の悪い姉妹は失業中の不幸な折伏屋ナンミョウ之介くんを掴まえて来て拷問にかけました。



「御姐さん方はSMの趣味でもあるのかっちゃん。拙者の身体中を電線で縛ったりしてどうするつもりだっちゃん。」

「お主は包帯グルグル巻きミイラから電線マンになったのじゃ。知ってる事を全部吐かぬとコンセントに差し込むぞい。」

「何でも言うからそんな酷い仕打ちはやめてっちゃん。」

「其の方が着けているゼッケン666の秘密を包み隠さず総て話すのじゃ。」

「これは行列になってる清水の舞台に並んだ時の整理番号だっちゃん。そんで飛び降りた後、シーボルトの病院に運ばれたんだけど、執刀医のシーボルトが間違えてそのまま縫い付けてしまったっちゃん。」

「お主なあ、嘘吐くんだったらもうちょっとましな嘘吐けや。シーボルトと100ボルトのどっちが好きなんじゃい。」

「ほんとだっちゃん。そんで退院してから一文無しになったんで、お友達のグラバーが可哀想だからって言って家宝のランプをくれたっちゃん。
綺麗に磨いてたらランプの精が出て来て、まだ我輩の出る時期ではないとか言って直ぐに引っ込んだっちゃん。」

「お主はファンタジー小説でも書きたいのかよ。あいつは本当に恐ろしい邪悪な獣で、お主が一枚噛んでるのは明白なんじゃ。」

「拙者はグラバーが死の商人で恐ろしい悪魔崇拝者だってこと知ってたから、あのランプを売ったり捨てたりしたら祟られると思って一緒に青木ヶ原まで持って来たちゃん。」

「お主は飽くまでも知らぬ存ぜぬと白を切り通そうと思うて居るのじゃな。短い付き合いだったなあ、ミイラ男。」

「拙者の事をそんなに信用出来ないんだったらもう良いっちゃん。仕事もないし、どうせミイラだし、氏んだ方がましだっちゃん。」

「最後にシスターの前で言い残すことはないんか、ミイラ男。」

「拙者は蘇ってから御姐さん方に会えて本当に仕合せ者だと思ったちゃん。生きている間は放蕩息子とかオポッポとかウポッポとか馬鹿にされ通しだったちゃん。」

「それは人の名前じゃろが。ついこの間地獄に堕ちた奴らじゃがな。」

「江戸時代にはよく使った言葉だっちゃん。ランプの中にいる変な奴も口癖みたいに言ってたっちゃん。」

「こらっ、愚妹もも子、こいつが言ってる事をワシに解り易く説明せい。ワシが納得できない場合は100ボルトでシバクぞ。」

「わたくしは知りませんわ。もう面倒臭いから早くコンセントを差し込んでくださいな。」


するとその時でした。因業寺閻魔様が疾風の様に颯爽と現れたのです。



「ワッワッワッワッ、わしが閻魔大王様なんだおォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ。」

「帰れよ馬鹿。」

「フッフッフッフッフッ、年輪もオツムも足りぬ貴公らにはちと難しいカラクリがあった様だわい。」

「だから誰も呼んでないから早く帰れと言うとんのじゃ。」

「そのミイラ男の証言でも明らかな通り、前首相のオポッポは生きておる。」

「そうかいそうかい、お主は墓参りに行ったけど人相が悪いので門前払いを食らったちゅうんじゃな。」

「オポッポはK.O病院の地下秘密病室にいるのを突き止めたんだわ。そこに居ったのは邪悪な獣のクマーじゃったんだわ。」

「合気道7段、柔道5段、空手3段のワシをからかっておるのか。」

「これから攻撃に行くからチミたちはテレビでも見てなさい、ではまた。シュバッッッッとな。」

「氏ねよ馬鹿。」



閻魔様は魔力の強大なクマーを倒すべく、大巨人のマサカリ担いだ金太郎くんを派遣してクマーに挑みました。
ところが金太郎くんはクマー得意の反則技、下腹部攻撃によって呆気なく敗退してしまったのです。

因業寺閻魔様にはもう打つ手がありませんでした。
このまま邪悪な獣クマーに支配されたまま人類は滅亡してしまうのでしょうか。





「因業寺の阿呆は地獄に逃げちまったようじゃな。愚妹もも子よ、お主も身辺整理でさぞや忙しい事じゃろうて。」

「あら、お姐様、わらわにはネズミーランド復活の偉業を成し遂げる責務が御座いますのよ、オホホホホ。」

「お主の必殺技は三十六計逃げるに如かず、じゃあなかったのかよ。」

「人間と魔物には災いをもたらして、ミイラには影響を及ぼさない、或る物が御座いますの。」

「貴公なあ、こんな一大事に謎掛けやってる場合じゃあなかろうが。」

「既にワルキューレエクスプレスに折伏屋ナンミョー之介を乗せて、ヴァルハラまでその或る物を取りに行かせましたの。」

「勿体振ってねえでさっさと何の事だか教えろや。」

「ナンミョー之介には、世界に一つしかない豪華絢爛な黄金の指輪と、カワウソの皮に入った黄金を持たせて欲の深いクマーに届けさせますの。」

「お主はそんなもんで邪悪な獣のクマーを買収出来るとでも思ってんのかよ。」

「今ちょうどナンミョー之介から無事品物をクマーに渡したと連絡が入りましたわ。」

「そんでクマーは喜んだ訳かよ。」

「知りませんわ。呪われた指輪と黄金を差し上げただけですので、ホホホホホホ。」



地獄女王もも子さんの言った通り指輪と黄金を手にした邪悪な獣クマーは、呪いに掛けられ剥製のクマになってしまいました。
こうして、もも子さんの知性溢れるクマー退治により、人類は滅亡の危機から救われたのでした。
でも地獄女王蛇蝎院もも子さんがクマーに渡した呪われた指輪と黄金とは何だったのでしょうか。





「こらっ、愚妹もも子、ワシに解り易い様に説明せんかい。」

「後でわたくしが歌って聴かせて差し上げますので少しお待ちになって下さいな。」

「地獄に帰れよ馬鹿。」



「地獄女王もも子の大勝利ィィィィィィィィィィィ、ブリブリ列島に生まれて誇らしいですゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ。」



「氏ねよ馬鹿。」










To be continued.
















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