この文章は全てフィクションです ーーーーーーーーーーーーーーー 「オレヴァホ・ラフ・クノダイスキーの口伝117」
アシブトコウ
コウノトリの一種 かなり大型の種で羽根を広げた時の大きさは 2m以上になり大変な迫力がある しかし この大きな羽根は野生種にしか存在せず 我々が目にすることが出来るのは 長年かけて品種改良されてきた家禽種で こちらはすでに羽根が退化しているのである
名前の由来はそのまま足の筋肉の立派さから名付けられた 野生種でも腿の周りが50cm近くなり 家禽種にいたってはさらに10cm程度太く 鳥類としてはその肉量はずば抜けて多く 非常に優秀な食肉原料である 現在は家禽種のみ食肉にすることを許されているが これは過去この鳥の肉の味と量に魅了され 乱獲の憂き目にあった為取られた措置である この過去の乱獲により一時期絶滅寸前まで個体数が減ったが 比較的野生種に近い家禽種と交配繁殖させ野性に返したり 野生種を捕獲保護し繁殖させたりとの種の保存に力を入れたため 今は個体数を自然条件下で維持できるまでに戻しているのである
ここ最近のこの鳥に関する新たな問題として 家禽化の進んだ種の分類についてひと悶着している所である 食肉として利用される足だけが肥大し もともと翼長2m以上もあった立派な羽根も 今では1mにも満たず羽ばたこうともしない このことから コウノトリの一種として分類したままでいいのだろうかという 意見が出始めているようである だからといって ダチョウなどの走鳥類に分類するには あまりにも走るのが遅く 小学生にも追い越されるくらいな為 こちらの方でも物議をかもしているのである ただし その足の筋肉の太さから来るキック力は並外れており 飼育員が油断してキックを食らった時には 大腿骨を一撃で粉砕してしまったという事故も報告されている このことから 新たに蹴鳥類という分類を作ってはという意見もあるそうで これらの問題を全てあわせて激しく議論されているようである
さて肝心の肉の味は やはり太く改良を施されただけあって力強く 血の味が大変濃厚で癖があり 好みの分かれるところである しかし この濃厚な味に比例して滋養強壮効果が高く 特に産後の体力回復に利用されることが多い 濃い血の味は薬味などを工夫すると案外気にならなくなる
私はあえて特別な薬味を使わずに ソテーで食してみたが なるほど血の味は大変濃く ともすると 鉄さびを舐めているかのような味に感じる人もいるだろう と思ったがしかし これは料理人の失敗で さばく時にしっかりと血抜きをする前に調理に入ったからだと 後から聞かされたのである まぁ 早く早くと急かした私も悪かったと思う やはり料理は早さも大切だが ほんの少しの手間と時間を惜しんではいけないのだなと 反省した次第である ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー この文章は全てフィクションです
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