20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ORKの口伝 作者:出雲一寸

第89回   ヒヨリケラ
この文章は全てフィクションです
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「オレヴァホ・ラフ・クノダイスキーの口伝111」

ヒヨリケラ

春先に活発に活動を始める
ケラの一種
通常ケラは地中で大半の時間を過ごすが
この種は主に地上で活動するのである
また大きさも通常のケラよりも大きく
最大体長は確認された物で10cmの固体がある
その体の大きさゆえ
本来捕食される側のケラが捕食者のモグラを
反対に襲って食べることもこの種に限ってあるようである
しかしこのようなことは滅多に無い様で
5から6cmくらいが平均的な大きさのようである

この種の特徴は上で述べたように
地上での活動が生活の大半を占めることである
その為元々茶褐色の体色が
日焼けによるメラニン色素が沈着し
黒色が強く出ており
少し遠めに見た場合小型のモグラとまるで区別が付かない
しかしモグラに比べてより立派な前足が付いており
きちんと観察すればまず間違えることはないであろう
ただ注意すべきは観察時の距離のとり方である
うかつに近寄りすぎると
地上で生活し続けることによって
地下に居る時は退化していた羽根が立派な物になり
少しの距離なら飛び上がれるようになっているので
外敵と判断された場合襲い掛かられる可能性が
高いのである
モグラでさえかみ殺すその強力な顎でかみつかれると
怪我をするのは必死である為
この点には注意が必要である

この様に
体が大きく凶暴であるのに
名前がヒヨリなのは
よい天気の日には
のんきに日向ぼっこを良くするからである
地上に出て黒色が強くなった体色は
草の陰の近くに静かにしていると
目のよい鳥類であっても
なかなか発見することは難しいようで
のんびりと日向ぼっこに興じることが出来るようである
この昆虫は群れることはないが
この様に天気の良い日は一斉に日向ぼっこする為
じっと観察すると地面がモゾモゾ動いているように見え
実に不気味である

しかし
この昆虫を捕獲するならばこの時が一番である
一斉に襲い掛かられる事は無いのかと
思われるかもしれないが
何しろ日向ぼっこでほうけている最中である
たとえ素手でつかんでも
そのゴツイ前足や凶悪なアゴも使う様子も無く
いとも簡単に捕まえることが出来るのである

この様に
いまいち間抜けなこの昆虫であるが
何ゆえわざわざ地上に這い出して生活を始めたのかが
生物学者たちの間では議論の的であり
地上に這い出たことにより
掘削用の前足の形状の変化の推移などが
今後の研究対象として
また
その他のケラのように地中に潜って過ごさない為
上手く捕獲できると飼育しての観察も面白いようで
子供が飼育する対象としても
一部では人気の昆虫である
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この文章は全てフィクションです


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 191