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作品名:ORKの口伝 作者:出雲一寸

第88回   チヂネギ
この文章は全てフィクションです
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「オレヴァホ・ラフ・クノダイスキーの口伝110」

チヂネギ

ネギの原種ではないかと言われている
春先から初夏にかけて芽を出す山野草である
地上部は細いネギのようで
地下には塊根を形成しこちらはさながらラッキョウである
春先に出した芽を初夏にかけて成長させ
その後地上部の先端に灰白色の小さい花を三輪咲かせる

この植物の特徴は
開花し種子を地上に落とした後に現れる
真夏の間一ヶ月くらいかかって
地上部を地下の塊根が吸収するのである
この時来年の開花に備えて地下で吸収した養分も
全て地下の塊根に蓄えられるため
地下部の食用としての旬は
地上部を全て吸収しきった秋となるのである
上で述べたこの植物の特徴は
もともとは夏に乾燥する地域がこの植物のみならず
ネギ類全体の原産地ではないかと言う学説の根拠とされ
いまだに論議の耐えることのない学会のテーマである

食用として用いる時は
春に芽を出し始めたばかりは一番癖が少ないが
いかんせん量があまりにも物足りないため
一般的にはもう少し成長させてから採取する
またあまりにも種子がまかれる前に
地上部を採取し続けることは
この植物の存続にも関わるので
自然繁殖地では節度のある採取が肝心である
採取するタイミングは地上部が10cmを超えたくらいで
20cm四方に一本くらいは残すように採取する
こうしておくことで毎年少しずつ繁殖しつつ
野草を楽しめるのである

また秋に旬を迎える地下部を美味しく頂くためには
また別の場所で地上部をしっかりと吸収した物を
採取する必要があるため
都合二箇所の採取地を見つけなければならない
もちろんこちらも地上部の採取と同じように
決して全てを持ち帰っては二度と食べられなくなるので
採りすぎには並々ならぬ注意が必要である
近年はこの植物の繁殖するに好適な土壌の研究が進み
生産技術の確立ももう少しだそうである

地上部の調理法はほぼネギと同じ使用法が当てはまる
栽培品種のネギのようにボリュームが無いため
そのものを大量に食べることはよほどでないと難しい
香りが強いため薬味に使うのが一般的であるが
少し多く手に入った時は
さっと茹でてヌタにすると酒のつまみとして
季節感あふれる一品となるであろう
地下部は見た目はラッキョウの用であるが
茹でた時の食感はホクホクとしており
どちらかと言うと火を通したニンニクのそれにとても近い
しかしニンニクのような香りはしないため
異性と会う直前に食しても安心である
味わいは淡白
どの様な味付けにも合うが
茹でた物は甘味を強くつけた味噌
油で揚げたものは塩または醤油が合う
マヨネーズならばどちらにつけても美味しくいただける
この様に美味しく食べることの出来る植物なので
今後の栽培技術の向上に期待を寄せるのである

ちなみに私は自分だけの秘密の場所を持っているので
季節には食べ放題である
次の旬が待ちどおしいのである
ジュルるる
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この文章は全てフィクションです


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