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作品名:ORKの口伝 作者:出雲一寸

第69回   ヤギリンゴ
この文章は全てフィクションです
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「オレヴァホ・ラフ・クノダイスキーの口伝91」

ヤギリンゴ

上記の名は和名であり
英名を元として名付けられた物である
元となった英名は「バフォアップル」
ヤギの悪魔バフォメットを思わせる怪しい容姿から
こう名付けられたようである

まず何よりも木の幹が怪しい
グネグネと上下左右にうねりながら伸びて行き
四方八方に枝を伸ばす
その次には葉っぱが怪しい
深い緑色を基調としていながら葉脈の色が赤黒く
さながら動物の血管の色を思わせる
そして何より果実が実に怪しい
墨汁を塗った上にコールタールを重ね塗りしたかのように
黒い果皮をしており
果皮だけでなく中身も黒ずんでいるのである

この様にひたすらに不気味で怪しいこのリンゴは
古から人々に嫌われていたようで
近年までは栽培されるどころか
自生しているのを発見された途端に伐採されていた
しかし憎まれっ子世にはばかるの例えのように
この樹は生命力が強く
細い根のかけらからでも再生し生えてくるため
どんなに嫌われて切り倒され続けても
少し油断していると復活していたようである
このため今日まで絶滅せずに生き残ってきたのである
種の発芽力も大変強く
どんなに適当に転がしておいても
とりあえず芽は出るのである

しかし
実の味のほうはあまり良くなく
人間だけでなくその他の動物たちもあまり食すことは無い
口がアスタリスクになる位の強烈な酸味で
まるで生食には向いていない
怪しくて不気味な容姿で好奇心を煽り動物をおびき寄せ
この強烈な酸味に驚いて落としたり投げたりした所で
芽を出し根を張るというのが
この植物の繁殖戦略のようである

この様に
不気味さゆえ観賞用としてはあまり好まれず
全般に飲食用にも不向きなこのリンゴであるが
近年栽培面積が少しずつではあるが増えているのである
その目的は香水の原料としてである
このリンゴの果実に発生する
「いちまつしろかび病」という病気により
その名の通り黒い実に白いカビが生え市松模様になる
病気が進行し落果したものを採取し発酵
蒸留し精製して香水に加工されるのである
この香水は「デモンズティア」と呼ばれ
おもに女性用として徐々に人気を集めているのである

この香水の香りは
果実の時とはまったく別物で
華やかさを持った甘い香りで女性がその身に纏うと
まさに小悪魔の誘惑である
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この文章は全てフィクションです


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