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作品名:ORKの口伝 作者:出雲一寸

第64回   バベルバンブー
この文章は全てフィクションです
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「オレヴァホ・ラフ・クノダイスキーの口伝86」

バベルバンブー

竹の一種で極めて巨大な品種である
茎の直径は平均2.3m高さは50mに達する
竹林の中で最も高さのある4本から7本を中心に
円すい状に繁茂し
その様子が天空に聳え立つ塔の様に見えることから
この名が付けられたのである

この竹が一度群生を始めると
その他の植物は成長速度に追いつけず日照不足に陥る
この為この竹以外ではコケやシダばかりになる
この段階を過ぎるとさらに密生し
ついにはこの竹の落ち葉や枯れた物に生えるカビ位しか
生えることが出来なくなるのである
こうしてバベルバンブーの塔が完成する
塔の形になるまではほんの一年で
その後4年から5年でその他の植物がほぼ無くなるのである
最大の群生地では
円の直径が2kmに及びもはや塔ではなく一つの山
ここでは高さも150mに達しているのである

こうして塔になったこの竹の根元では
ほとんど日光が当たらず
常に湿気とカビ臭さに包まれている
生きている竹もカビに犯されたり
その他の細菌に感染したりしそうな物であるが
そうならないのは
この竹の非常に強い抗菌作用による物である
近年研究が進みこの作用をもつ物質が特定され抽出
抗菌物質として活用されるようになり
特に注目されているのは抗真菌薬への利用である

この竹の繁殖・成長力の高さは目を見張る物が
あるのであるが
そこが最大の欠点でもある
人家のそばに一たび生え始めると
その後はどちらかが滅びるまで延々と続く戦いである
昔は手で切り倒すことしか出来なかったため
成長期に2日3日放って置いた人の家は
この竹に飲まれてしまったそうであったが
最近ではこの竹専用の薬品があるため苦労は無いと
現地の人達は喜んでいるそうである

そして何よりつまらないのは
食料としての活用は不可能に近い事である
地面に埋まっている状態のタケノコであっても
麻縄をしがんで居るかのような噛み応えで
味も青臭くて仕方がない
いろいろと過去に試されてきたが駄目であったようである
私もありとあらゆる手段を講じて食べてみたが
全ての方法において
不味
煮ても焼いても食えないを地で行くような植物である
無念である
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この文章は全てフィクションです


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