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作品名:ORKの口伝 作者:出雲一寸

第21回   マゼンタシルク
この文章は全てフィクションです
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「オレヴァホ・ラフ・クノダイスキーの口伝43」

マゼンタシルク
MagentaSilk

文字通り
赤色の絹糸であるが
染色した物ではない
「赤絹蚕(セキケンサン)」
という蛾の幼虫の繭から取れる糸である

かつて
シルクロードから絹が伝えられた時代
絹の中でももっとも稀少な物として
遥か欧州にまで伝えられた物であるが
その当時の物は
その貴重性ゆえに運搬途中に強奪される等し
現存する物は一点のみとなった様であるが
これも噂話に近い
滅びたどこかの国の
戴冠式用のマントだそうである
警備上の問題で保管場所も定かになっていない
とのことである

シルクロード交易が盛んな時代には
赤絹蚕の養殖も試みられていたが
どうしても上手くいかなかったようで
当時は自然に作られた繭を採集して
マゼンタシルクを生産していたため
赤絹蚕の数が激減してしまった
近年まで絶滅したかに思われていたが
開発の進行により
山奥まで人が踏み入ることで
偶然生き残りが発見される事となった

この機を逃しては今度こそ絶滅する
世界の昆虫学者達は総力を結集し
赤絹蚕の養殖に取り組んだ
学者達の尽力の結果
かつての養殖が失敗に終わり続けた
原因を特定することに成功
餌に対する考えが根本的に違っていたのである

赤絹蚕の幼虫も成虫も
普通の蚕と見分けが付かず
同じ桑の木に取り付いて育つが
赤絹蚕の幼虫は
こっそりと
カイガラムシの一種も食べていたのである
かつての養殖が失敗に終わったのは
このカイガラムシの一種を食べさせ無かった為
栄養失調に陥っていたと推測される

現在は
養殖技術も進歩したため
マゼンタシルクは普通のシルクと同じ様に
生産出来る様になった為
一般市場にも広く出回るようになった
絹製品の赤の部分は
ほぼマゼンタシルクが使用されている

これは余談だが
昔女性の友人の誕生日に
マゼンタシルクの製品をプレゼントしたが
私の頬が赤く染まってしまった
穴あきだったのが御気に召さなかったようである
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この文章は全てフィクションです


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