20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ORKの口伝 作者:出雲一寸

第127回   トッレ・プロシェット・マッジョリーノ
20120321口伝149トッレ・プロシェット・マッジョリーノ

この文章はフィクションです

ーーーーー

「オレヴァホ・ラフ・クノダイスキーの口伝149」

トッレ・プロシェット・マッジョリーノ

 地中海地方に生息する肉食のコガネムシの一種である。
体長は2cm前後で主に食料としているのはその他生物の死骸、
しかし自分たちより体の小さい昆虫などは、
生きたまま餌にすることもある。
その中でも羽がなく飛んで逃げることの出来ないアリは、
特に餌にされやすいようである。

 この昆虫の特徴は餌を保存する方法にあり、
名前もこの特徴から付けられたものである。
 まず餌となる動物の死肉を薄く切り取り巣穴に持ち込む、
そして丁寧に自分の体の高さと同じくらいに積み上げるのである。
この積み上げられた薄い肉の様子が、
まるで切り分けられたハムで出来た塔のように見えたらしく、
この名前が付けられたそうである。
 トッレ・プロシェット・マッジョリーノとは、
塔・ハム・コガネムシと言う意味である。

 完全な肉食と長年考えられてきたこの昆虫だが、
最近の飼育技術の進歩によって長時間飼育が可能になり、
新たな事実がわかりはじめているそうである。
 まずはその寿命の長さが環境によって大変変化するそうで、
もとの自然環境に近づけた飼育条件では2年の所、
人口的にさらに温暖にした管理環境だと5年に伸びたそうである。
ただし3年以降は繁殖能力は機能しなくなるとのことだ。
 つぎにその食性の変化である、
2年目の後半に入ると肉以外の物も食べ始めるようになり、
5年目に入ると肉:植物など=1:9という割合になるという。
 はじめのうちは突然変異と思われていたのだが、
長く生きる個体があまりにも多く、
長生きした場合の食性の変化は90%以上だったため否定された。

 自然環境下では2年と生きることのできない昆虫に、
どうしてそれ以上生きた時の性質の変化が、
プログラムされているのか?
現在はこれといった物証が揃っていないが、
本来の生息環境ではないかも知れないと言うのが有力である。
 もっと温暖な地域で同様の昆虫が発見されれば、
どのようなルートを通って移動したかもわかり、
更に生物学的に素晴らしい発見のなるのだろうが、
今のところ見つかってはいない。

 生物というのはもともとそういうものなのかも知れないが、
程良く暖かくなって餌の心配がなくなると長生きするとは、
なんとも人間臭い昆虫である。

ーーーーー

この文章はフィクションです


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 198