20120321口伝149トッレ・プロシェット・マッジョリーノ
この文章はフィクションです
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「オレヴァホ・ラフ・クノダイスキーの口伝149」
トッレ・プロシェット・マッジョリーノ
地中海地方に生息する肉食のコガネムシの一種である。 体長は2cm前後で主に食料としているのはその他生物の死骸、 しかし自分たちより体の小さい昆虫などは、 生きたまま餌にすることもある。 その中でも羽がなく飛んで逃げることの出来ないアリは、 特に餌にされやすいようである。
この昆虫の特徴は餌を保存する方法にあり、 名前もこの特徴から付けられたものである。 まず餌となる動物の死肉を薄く切り取り巣穴に持ち込む、 そして丁寧に自分の体の高さと同じくらいに積み上げるのである。 この積み上げられた薄い肉の様子が、 まるで切り分けられたハムで出来た塔のように見えたらしく、 この名前が付けられたそうである。 トッレ・プロシェット・マッジョリーノとは、 塔・ハム・コガネムシと言う意味である。
完全な肉食と長年考えられてきたこの昆虫だが、 最近の飼育技術の進歩によって長時間飼育が可能になり、 新たな事実がわかりはじめているそうである。 まずはその寿命の長さが環境によって大変変化するそうで、 もとの自然環境に近づけた飼育条件では2年の所、 人口的にさらに温暖にした管理環境だと5年に伸びたそうである。 ただし3年以降は繁殖能力は機能しなくなるとのことだ。 つぎにその食性の変化である、 2年目の後半に入ると肉以外の物も食べ始めるようになり、 5年目に入ると肉:植物など=1:9という割合になるという。 はじめのうちは突然変異と思われていたのだが、 長く生きる個体があまりにも多く、 長生きした場合の食性の変化は90%以上だったため否定された。
自然環境下では2年と生きることのできない昆虫に、 どうしてそれ以上生きた時の性質の変化が、 プログラムされているのか? 現在はこれといった物証が揃っていないが、 本来の生息環境ではないかも知れないと言うのが有力である。 もっと温暖な地域で同様の昆虫が発見されれば、 どのようなルートを通って移動したかもわかり、 更に生物学的に素晴らしい発見のなるのだろうが、 今のところ見つかってはいない。
生物というのはもともとそういうものなのかも知れないが、 程良く暖かくなって餌の心配がなくなると長生きするとは、 なんとも人間臭い昆虫である。
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この文章はフィクションです
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