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作品名:ORKの口伝 作者:出雲一寸

第124回   モモンガコブラ
20120316口伝146モモンガコブラ

この文章はフィクションです

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「オレヴァホ・ラフ・クノダイスキーの口伝146」

モモンガコブラ

 体長3m前後と毒蛇の中ではかなり大型の部類に入る一種である。
 熱帯雨林に棲息し、
不思議なことに大陸が違っていてもほぼ同じ種が生息している。
一番数多く生息するのは東南アジア地域の熱帯雨林だが、
その他にも南米のジャングルやアフリカの孤島などにもおり、
その生息数も決して少ないとは言えないのである。

 何故この様な生息分布になったかについては、
諸説紛々有るのだが、
現在ほぼ確実な説として大航海時代の影響が挙げられている。
 この蛇の特徴によって船に乗り込んでしまい、
一緒に世界中に移っていってしまったとされているのである。

 コブラと言えば思い出される首の周りの特徴的なフードだが、
この種の特徴は何よりもこの部分に表れているのである。
フードが体の末端まで付いており、
広げた幅は20cmにもなるのである。
 そしてこのフードを広げて樹上から滑空するのであるが、
上手く風をつかむことが出来れば100m程飛ぶことが出来る。
この滑空するところから名付けられているのである。

 先に述べた不思議な生息分布の原因は、
こうして陸地から離れた船にも風に乗って飛んできて、
そのまま運ばれていった個体が行き先に住み着いたようである。
もちろん船に乗りたくて飛んできたわけではなく、
獲物を追って飛んだ結果船に着地してしまったのである。
 この蛇は幼体の頃は地面近くのカエルなどを餌とするが、
成体になると滑空しながら鳥を獲物として捕らえるようになる。
船の甲板のゴミなどを目当てに鳥が集まっている所を、
鳴き声で感知して跳びかかるようである。

 また滑空に習熟した個体の中からは、
変わった飛び方をするものが現れることも多いようである。
フードを広げたままとぐろを巻いて、
まるでパラシュートのようにふわふわと降下するそうである。
 頭の上から毒蛇がゆっくりと降りてくるとは、
想像しただけで恐ろしいことだが、
自分の口の大きさ以上の獲物を襲うことは殆どない、
産卵期などの気の立っている時期でなければだが。

 それに人間が襲われたとしても実はそれほど危険ではなく、
成体に噛まれても命に別状が出るのは、
子供とアレルギーのある人だけである。
 滑空に特化した体の作りとなっているので、
同じ大きさの蛇に比べて締め付ける力が弱く、
大人なら十分に振りほどくことが出来るのである。
 毒の方はどうかというと、
こちらも滑空するために体を軽量化した結果、
毒腺も極めて小さいものになっているのである。
毒による害よりも傷口からの感染症に気をつけたほうが良い。
 これらのことから仕留められる獲物も限られており、
口に入り尚且つ少量の毒で仕留めることの出来る、
小さい鳥やカエルなどとなっているのである。

 こうして小鳥を襲いに船に乗ったこの蛇は、
船乗りたちの格好の食料とされたのではと私は思う。
屈強な船乗りたちのことだから、
軽量化され骨と皮の多いこの蛇でも平気で食べていた気がする。
 私も研究用に繁殖されているものを手に入れ食べてみたのだが、
正直肉は美味しいものではなかった。
痩せていてあまり使われていないため旨みに劣るのである。
しかし骨は大変美味であった、
細くて細かい骨なので少し強めに素焼きにすれば、
パリパリと香ばしい骨せんべいとして美味しくいただける。
これを食べていた船乗りたちは、
きっと骨太揃いだったろうと思うのである。

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この文章はフィクションです。


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