20120120口伝143ヌオターレ・マンドルラ
この文章はフィクションです
ーーーーー
「オレヴァホ・ラフ・クノダイスキーの口伝143」
ヌオターレ・マンドルラ
汽水域に生息する生き物で、 一応カエルの一種であるとされている。 ヌオターレは泳ぐ、 マンドルラはアーモンドの意で、 おたまじゃくしがローストしたアーモンドに色といい形といい、 あまりにもそっくりなのでこう呼ばれている。 後で述べるが今現在生物学的地質学的に非常にホットな生物で、 携わる人達は目を離すことが出来ない重要な生物である。
主に河口付近に生息し周辺の藻などの植物質の餌を食べ、 成体になっても少し上流に移動するくらいで、 生涯生まれた場所の半径300m程度の範囲で過ごす。 この為孵化の季節になると、 大量のおたまじゃくしが狭い範囲に集まり、 子供でも簡単な網で大量に手に入れることができる。 この様に季節が限られるけれども、 低い労力で簡単に手に入れることができるタンパク源として、 古くからおたまじゃくしが食用に供されてきたのである。
古くから生息地では人と馴染みの深いこの生物だが、 先に述べたように学術的に非常にホットな状況にある。 なぜそのような状況かというと、 この生物は成体であるカエル状になっても、 すべての個体の尻尾が消えずそのまま生涯を終えるのである。 これは魚類であった頃の名残であろうされている。 この生物に注目が集まって、 周辺の地質調査をしてみたところ、 両生類が登場したとされている年代以前の地層から、 この生物に酷似した化石が出土した。 そのためシーラカンスなどと同じように生きた化石として、 より一層の注目を集めることとなったのである。
このように進化の過程が生きたままそこにいるような生物が、 なんの影響も世間に与えないわけがなく、 国際的な保護動物や生きた遺産として登録する運動が始まった。 しかし古来より食用としての利用をしてきた生息地の人達との、 食文化保存の視点からの調整が難航し、 現在は足踏み状態にあるそうである。 生息地の人達の意見としてはこうである。 いつごろからか誰もわからないほどの昔から、 ずっと人に食べられ続けていたにもかかわらず、 全く絶滅せずに安定した状態を続けているのだから、 今の食用としての利用状態を続けるべきだという意見が多い。 生息地への人の出入りを止めると、 野生動物にほろぼされるのではないだろうか? ということである。
こうして自分たちの食文化を守りながらも、 次の策をきちんと講じている所が、 この生息地の人達の賢い所である。 保護活動などの噂が立ち始めてすぐに、 採卵し養殖を初めてすでに安定した繁殖技術を確立している。 さらに、 今でも食べられる生きた化石として、 天然物は高級食材としてビジネスに発展させているのである。
長年食べ続けられているこの生物、 もちろん私も食べてみた。 昔から食べられている調理法としては、 オリーブオイルと塩に漬け込んだオイル漬けや、 さっとボイルしてトマトソースと合わせたものがある。 どちらも磯の香りがする身の硬い小魚料理といった感じである。 最近は日本の佃煮の製法も取り入れているようで、 調理のバリエーションは幅広くなりつつあるそうだ。 もちろんこちらも食べてみた、 日本で食べた海苔の佃煮とじゃこの佃煮を合わせた感じの、 白いご飯がいくらでも食べられそうな味だった。
この美味しくも貴重な生物が滅んでしまわないように、 あまり食べ過ぎないように気を付けたいものである。
ーーーーー
この文章はフィクションです
|
|