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作品名:ORKの口伝 作者:出雲一寸

第120回   マガ・ガストロポダ
20120119ORKの口伝142マガ・ガストロポダ

この文章はフィクションです

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「オレヴァホ・ラフ・クノダイスキーの口伝142」

マガ・ガストロポダ

 温帯から亜寒帯までに分布する多年生植物である。
草丈20〜40cmで日向日陰を問わず生え、
草原から林の中まで広く生育する事ができる。
葉は基本的に立って伸びるが、
気温が摂氏10度以下になり始めるとロゼッタ型に展開する。

 花は春先に咲き始め初夏までと長い期間咲き、
深く暗い紫色から黒色の立体的な入り組んだ花形をしている。
 この花の厄介なところはその匂いにあり、
化膿した傷に絆創膏を貼って3日くらい放置して蒸れたような、
大変ひどく強い悪臭を放つのである。
しかしこの臭いにはきちんとした理由があるのであり、
その理由とは受粉の為である。
この腐肉に近い悪臭を放ちハエを呼び寄せ、
受粉させる虫媒花である。

 この花の色と立体的で入り組んだ形、
そして腐肉のようなひどい臭いによって、
古くから魔女の女性器に見立てられてこの名前が付けられた。
マガとは魔女、
ガストロポダとは法螺貝のことである。
 この様にあまりいい印象を持たれていないこの植物は、
一部の厳格な国では持ち込み及び栽培禁止である。
もちろん野生に勝手に生えている国もあるのだろうが、
さすがに探して絶滅を図るところまではしていないようである。
 中世の魔女狩りが盛んだった頃には、
この花が庭に偶然であったとしても生えていることで、
魔女である証拠とされた不幸な歴史もある。
誰も好き好んで魔女と認定される証拠を植えることもないはずだ、
しかしこの花は風で種を飛ばしてしまうため、
この様な不幸な事故が度々起こってしまったそうである。

 このようにどうにも怪しい印象のこの植物は、
その怪しさからやっぱり怪しく利用されていたそうだ。
自生する地域では古くからこの花を乾燥させた粉末が、
媚薬として利用されているのである。
 現在は科学的に成分を分析されて、
男女ともに性的な興奮をうながしたり、
肉体的な反応を強化するようなものは検出されていない。
 その臭いを嗅いでもとの花の形を思い出し、
そこからさらに連想を掻き立てられることによって、
性的に興奮しているのではないかと考察されている。
 最近ではこの花の臭い成分を抽出し、
香水に利用している人達もいるそうである。

 そしてなにより面白いところは、
文化や生活様式が全く異なっているにもかかわらず、
この植物が生えている地域には必ず、
媚薬としての利用法が古くから伝わっているところである。
 世界の人口が増え続けるのも当たり前なのである。

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この文章はフィクションです


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