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作品名:ORKの口伝 作者:出雲一寸

第114回   ローション・シンドローム
この文章は全てフィクションです

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「オレヴァホ・ラフ・クノダイスキーの口伝136」

ローション・シンドローム

細菌感染によって引き起こされる、
一見すれば精神疾患に見える病気の一群である。
この病気の特徴は、
ひたすら同じ事柄に対して執着するところにある。
その執着の具合が粘度の高いローションのようである事から、
名前も付けられる事となった。
その執着心がネトネトグチャグチャと非常に不快であるため、
通称ネトグチャ病と巷では呼ばれているのである。

この病気を引き起こす細菌は、
その名をアンシュテ・コップフと今は呼ばれている。
今は呼ばれていると言う言い方をするのは、
現在第一発見者と名乗る人間が、
学者だけでなく一般の病院の医者の中からも現れており、
命名権についてすったもんだしているからだそうである。
先に述べた名前は、
医学関連雑誌に初めて紹介された時のもので、
その時の発見者ははっきりとはわかっていないようである。
この時はっきりとさせておけば、
後々から多くの人が名乗りを上げる事も無かった。
しかし大勢の研究者や医学博士が携わっていたため、
誰の物でもないということで、
あえて代表者の名前もださなかったそうであるが、
その善意が逆手に取られることとなったのは、
残念のきわみとしかいいようがないのである。

この細菌が感染するのは、
脳の中の記憶をつかさどる部分である海馬。
海馬の中でコロニーを形成し繁殖するのだが、
いくつものコロニーを作るのではなく、
ひたすら一箇所に集まり続けるのである。
このため良い悪いにかかわらず、
ひとつの記憶が非常に鮮明に強く想起され、
やがて肉体の行動にも影響を及ぼすようになってくるのである。

この細菌のコロニーは、
始めはどの様な検査をしても発見できないほど、
小さい物ではあるが、
ある程度の大きさになると検査画像で素人が見てもわかる位、
はっきりと映る。
しかしこの段階に達するまでに、
強迫神経症等の疑いで診療内科などを受診し、
誤診されてしまうことがほとんどである。
検査で感染が発見されるころには、
かなり激しく表立って症状が出ている事が多く危険である。

この様に専門医でも感染の発見と同定が難しい細菌だが、
判ってしまえば治療は今の所それほど難しくない。
細菌であるため抗生物質でたたく事が出来、
耐性菌に変異でもしていない限り恐れる事はないのである。
ただし、
普段から抗生物質を摂取していた場合、
体に入って耐性菌に変異してしまうと非常に厄介である。
健康と清潔を気にしすぎて薬品に頼った生活をしていると、
耐性菌に変異するリスクは非常に高くなると思われる。

今はまだこの感染症の事例は世界的に見ても非常に稀である、
普段から自分の体と向き合い心身ともに健康を維持し、
免疫力を向上させる事が何よりの予防策と思われる。

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この文章は全てフィクションです


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