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作品名:ORKの口伝 作者:出雲一寸

第109回   ミチゴメ
この文章は全てフィクションです
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「オレヴァホ・ラフ・クノダイスキーの口伝131」

ミチゴメ

インディカ種の古代米の一種である。
比較的乾燥に強く、
陸稲的な性質をもっているため、
インド周辺の乾燥地帯で古くから栽培されてきたのである。

この種の特徴は、
日本の古代米「黒米」「赤米」同様に、
色のついた種子を実らせる事にあるのである。
種子の色は赤色から青色の間で変化するのであるが、
酸性で赤色の種子が、
アルカリ性で青色の種子が実るのである。
しかし、
もともと酸性土壌を大変好む植物であるから、
収穫される物はほとんど赤色になってしまい、
青色の種子は非常に希少価値が高くなるのである。
土壌改良材などを施して必死に土作りをしたとしても、
アルカリ土壌ではほとんど育たないのである。
アルカリ土壌での安定した栽培技術の確立が、
この種の主な研究テーマとされている。

もうひとつの特徴として、
乾燥調整して籾殻を取り除いた玄米状のものは、
蓄光性を持ち夜間は蛍光色の光を放つのである。
光の色のベースはうす黄緑蛍光色であるが、
そこにもとの米の色が混ざりえもいわれぬ不思議な色合いとなる。
この様な特徴的な米が古代から栽培されてきたのは、
夜間外出時の帰り道を示す道標として利用されてきた、
という学説が今現在は主流となっているのである。
しかし、
この学説を裏付けるための実証試験が行われているが、
2cmの幅に0.5cmの厚みで道しるべとしておき続けても、
大体3時間以内に野生生物に食べつくされてしまい、
まったく道しるべとしては役に立たないそうである。
このため動物をよける物質をミチゴメに加えて、
道に撒いていたと推測されている。
古代に存在した野生動物が忌避する物質の特定が、
この学説が定説となるための壁のようである。

さて、
穀物として人間にとっての関心ごとは、
なんといっても収量と食味だと思われるのだが、
この種はそのどちらもいまいちである。
そのため栽培されてきた地域での人気もいまひとつで、
植物学者の研究対象として依頼されない限り、
農家もあまり作りたがらない代物であった。
この様に農家が進んで作りたがらなかったこの種は、
種自体が希少になっていたのであるが、
先に述べたとおり蓄光性を持っている事が幸いしたのである。
蓄光塗料の原料としての生き残りが模索されており、
徐々に栽培面積が回復しているようである。

いまいちと言われている食味のほうだが、
私も一応食べてみたのである。
まずは普通に炊いて食べてみたのであるが、
インディカ種の古代米だけあって、
粘りが少なくパラリとした炊き上がりとなった。
セオリーどおりにチャーハンに仕上げてみたが、
非常に美味しい仕上がりであった。
次はカレーと合わせて食べてみたが、
こちらもまったく不味であると言う事は無く、
美味しくいただく事が出来たのである。
現地とさほど変わらない調理法で食べたのに、
食味の評価にこの様に差が出るのは不思議な事である。

私が推測するに、
水との相性の問題なのではないかと思われる。
現地の水で炊飯するとその水の成分が原因となり、
不味に炊き上がってしまうのではないであろうか?
今回調理したのは私の自宅であるが、
たまたま相性が良かったと思われる。
後日現地に向かい、
水質調査をした上で同じ調理法をつかい、
食味審査をする必要がある。
水の相性が原因であるならば、
その後相性の良い水質を特定しさえすれば、
よい商業作物となるのではないかと思われるのである。

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この文章は全てフィクションです



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