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作品名:ORKの口伝 作者:出雲一寸

第106回   コメヌカザメ
この文章は全てフィクションです
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「オレヴァホ・ラフ・クノダイスキーの口伝128」

コメヌカザメ

水深1000m前後に生息する深海ざめの一種である。
体長13m体重1100kgという個体が、
現在までに確認された最大のものであるが、
これ以上の大きさの固体がいるであろうと推測されている。
なぜならば、
採取された生体のデータからこの個体がまだ若い固体であり、
生まれて二三年程度の物とされたからである。

名前の由来は、
このサメからとる事の出来る脂肪分の特徴から、
名づけられたようである。
このサメの脂肪分は、
水分との親和性が大変高いのである。
そしてこの脂肪分を乾燥させた粉末状の物が、
米ぬかに酷似しているためこの様に名づけられたのである。
このサメの脂肪分を乾燥させた粉末に、
少量の水分を加えて混ぜると乳液状になり、
これを肌に塗る事によって、
保湿剤として古くから利用されているのである。
また肌を白く見せる事ができるため、
化粧の意味でも使われていたようである。

かつて、
深い海から魚を取ることができなかった時代には、
たまたま浜辺に打ち上げられたこのサメからしか、
脂肪分を採取する事が出来なかったため、
大変に貴重な品物であったようである。
この事は平安時代の文献にもかかれており、
現代語に訳された
「動物・植物化粧品原料大事典」にも記されているのである。
この様に貴重なものであったため、
もっぱら上級貴族にしか手に入らなかったようである。

現在、
深海からこのサメを取ってこようと思えば、
古代よりもずっと簡単に取ることが出来るであろうが、
それでもコストパフォーマンスを考えると、
非常に高価な品になる。
今では植物性油脂から、
類似の物質が精製できるようになっており、
保湿性も本物に劣る事は無い。
乳脂肪分からも精製できるようであるが、
独特の乳の香りが好みの分かれる所である。
この様に人工的に作る事が出来るようになっても、
本物にこだわりたい人はいる様であり、
最高級化粧品には本物のコメヌカザメの脂肪粉末が、
使われているようである。

ちなみに、
私もかつて結婚20周年の記念に妻にねだられて、
コメヌカザメの本物の脂肪粉末入り化粧品を買わされたが、
とんでもない値段であった。
200ml入りの乳液を買ったのであるが、
オプションなしの軽自動車が新車で買えるほどであったのである。
どんなに技術などが進歩したとしても、
深海から特定の魚を捕獲するのはやはり難しいのであろうか。
その後しばらくわたしは、
晩酌を楽しむ事が出来なかったのはいうまでもないことである。

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この文章は全てフィクションです


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