事故に遭いました。
痛かったです。
けど、目覚めた後のショックの方が酷かった気がします。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
無機質なニオイと音。 白い光。 酷い目に遭ったことは何となく分かる。 右手首がギブスでガチガチに固められ、肩が抜けたんじゃないかと推察しうるような痛みが脳に伝わってくる。
けれども何が起きたのか具体的に思い出せない。 事故のショックで一時的に記憶が再生できないとかっていうようなものか。 何て言うんだったっけ、それ… 一過性全健忘? いや、それはストレスで起こるんだっけ。 つーか、ここはどこだ?
病院、にしては科学的な機材が多い気がする。 しかも、いるのオレだけだし。 ナースコール的なものはないのか…?
怪我は右手首と肩くらいかな、とあちこち確かめていたら、髪が伸びているのに気づく。
………どのくらい眠ってたんだろう……。
そうだ、家族に連絡を、と思って分からないことに気付く。 何が分からないって、家族の連絡先が。 それどころか家族がいたかどうかも分からない。
せっかく、待ちくたびれたでしょうけど、やっと起きれましたよって言おうと思ったのに。
さりげに落ち込んでいると、ぺたぺたいう足音がして人が来た。
「Hi、コンニチワ」
「こ、こんにちは…」
今「Hi」とか言った? 外国人には見えないけど、…あれ、ここどこの国?
「あの…オレどのくらい眠ってました? つーか、ここどこ?」 とか、とりあえずきいてみる。
白衣着てるから医者なのかなーと思ってたら、科学者さんだそうで、形態工学がご専門のソニーさんなのだとか。 「Dr.ソニーと呼びなさい」だってさ。
「ワレワレ研究しています。人間の延命や長寿について。 人体のパーツを人工的に作って機能させようというのもその一環です。 と、言うわけで、丁度良い素材だったのでサイボーグにしてみました。」
素材というのはオレのことか……。と勘繰るまでもなくDr.ソニーはオレを指さしている。 こら、人を指差すな。 何となく怒りがわいてくる。
「んなこと勝手にすんなっ」
「怒っても無駄ムダ」
チッチッチッと人差し指を振る。 ムカつくな…!
「キミもう死んだことになってるから、誰も助けてくれにゃいよん」
にゃいよん?にゃいよん?! ガァ!ムカつく!!
「死んだことになっててもオレは生きてるじゃねえかよ! どう言い訳する気だ!?」
「ヘイキヘイキ」
ソニーの馬鹿は白衣の背をごそごそと探り、丁度顔全体が映るサイズの鏡を差し出した。
「……ど、どちらさまですか…?」
と、鏡に向かって思わず尋ねた自分が阿呆のようで憎い…!
「て…っ、てっめえ…!整形してんじゃねえよ!!」
「ヨカッタじゃナイですか、ウツクシクなって」
「よかねえ!誰だこれはー!!」
グハッ、右手と肩が痛ぇ……
「ダイジョブですか?胴体の方はほとんどイジッてないですからね、治療はしたけど、痛いデショ?」 馬鹿ソニーがうずくまるオレを覗き込みながら言う。 イジッてとか言うな…。 なんか悲しくなってきた。
鏡の中のオレは金髪で薄く透明感溢れる(澄んだ?)碧の瞳をしていた。 それだけでもう別人の気がしてならないのに、造作が…造作が……て、天使みたい、とか思わず思ったオレの馬鹿!バカー! 自分の恥に耐え切れず憤死しそうです、カミサマ……
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