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作品名:クニタチ ビブン ホウテイシキ 作者:moritakumi

第1回   1
プロローグ

 ありがちな話なんだけど、これは何人かのアホウな大学生のお話。
どういう風にあほうなのかは厳密に言えない。
だってアホとかあほうの定義なんて習ってないからね
でも、ざっくりいうと、そうほんの少しづつみんなズレているんだ。いわゆる一般的なのものから。
何でこんな話をこんなレポートにまとめようって思ったかって、それはこんなに奇跡的なまでに浮世離れしてしまった面々が一か所に集まって、培養し続けられているっていう、もうとびっきりの偶然をみなさんに届けたいじゃないですか。
もちろん、本人たちはいたって真面目に暮らしているだけ。
このお話のよいところはさ、さっきも書いたけど少しだけズレているってとこ。ここ重要。
赤線ものだねっ。もちろん太陽系第三惑星を北と南に分けてるあれじゃないよぅ(最近、思いついたオヤジギャクを世界中に発信せずにはいられないんだよね)

イントロダクション

「最近、カップヌードル多くないですか?」
「そうかな? 前と変わらないよ 機械で作っているんだもの 一食77グラム、357キロカロリ。」
僕はこのレスポンスが好きで、瀧戸さんに会うためにわざわざ補食室までやってくる。しかし、今日はその手には乗りませんよ、ボケにはボケで更にのるのが効果的なんだから。彼女の場合。
「えっ、以外とヘルシィなんですね」
「これで生の野菜でも入ってたら、うん、最高」

予測されていたかのような返答。あるいは彼女も本気でそう思っているか。生野菜が入ってたってお湯入れたら温野菜ですよなんていわないぞ、そうは問屋が卸さない。

「確かに。ニキビとか出ちゃいますもんね」
「にきびはね、若い子の病気なの。私にはもうご縁がないわ」
瀧戸さんは修士課程1年の先輩。たしか早生まれだからまだ二十歳を二年だけ過ぎただけ。頭が良いなってのは何となく伝わってくる。とても不思議だけれどこういったものは隠せないと思う。やはりバカっぽい人はバカが多い気がする。それを思うと先ほどの意外とヘルシィなんですねなんてちょっと知性のかけらも感じさせない。能ある鷹は爪隠すというけれど、自分は時々スキー用の手袋でもしてるんじゃないかって思ってしまう。鋭利な爪の存在さえ気づかせないこの優しさ。アーメン。

「この前、節約生活を断行しますって宣言してませんでしたっけ?」
確信のある情報も疑問形で聞くようになったのはいつからだろう。まどろっこしくていけない。
「ええ、食費を切り詰めることにしました。だって年明けにはもう就職活動ですからね、都心まで出る交通費もバカにならないわ だからカップネードルを箱買いしてるの。お湯はただみたいなものでしょう、ここのガス代は共益費だしさ みんなでプールよぅ」

なんでだろう、いつもこうだ。結局一番最初の質問の答えが手に入ったわけだ。これが瀧戸さんの手法なのだ(と推測している)。
「でもねぇ、ニキビとまではいかないけれどお肌が荒れちゃって」
いったん彼女のペースに乗ってしまうともう流れに任せるよりない。この世には二種類の人間がいる(そもそも二種類に分けようと思って仕切りを作ったんだから当たり前田のクラッカーやん 爆)流れを作る側の人間と、結局それに巻き込まれる、あるいは乗ることを選ぶ人間。後者の方が圧倒的多数。もうどんな法案も両院可決。

「じゃ、ビタミンBですね」
なんでもっと気の利いたことが言えないのか。相手が瀧戸さんだからか。なんて単純。
「そうなのよぅ、だから買ってやったわよ。7,800円もしたのよ ぼったくりよね。だってさ、あんなの化学薬品なわけでしょう、だったら化学式とか生産方法を確立すれば大量生産できるでしょ。あれはほとんど研究費と会社の維持費なんだと思うわ 化粧品なんて最たるものよね」

そうそう瀧戸さんは社会科学系の単科大学の学生なのにやけに自然科学の知識もあるんだった。いや、関係ないか自分の所属なんて。知っているものは知っている、それだけ。自分の属している団体の性質で自分までも制限してしまうなんてナンセンスだ。しかし、若者にはその傾向が強い。若者は可能性が比較的大きい、これは不安につながる。なんでもできる。なんにでもなれる。というのはなかなか不安だ。いままでいろんな制約があったのに大学生になったとたんに何でも自分で決めなさい。あなたの人生なんだから。18歳まで髪の毛の色まで決められていたのが嘘みたいだ。だから若者は自己責任の行動の根拠の一端を所属組織になすり付けるのだ。うちは二流大学だからと。年寄りの方がそのへんのフレキシビリティは大きい。

「節約してるのにそんなの買ったら、本末転倒じゃないですか」
「いいえ、何も転倒なんかしてませんよ、食費は節約できているもの」
「食費の代わりに雑費が増えてたら全体としてダメですよ むしろ食生活が貧しくなった分マイナスです」
不味いな。この流れは最後に逆転されるパターンだ。
「そうそう、だからね今月から雑費節約キャンペーンも同時開催ですよ もう出血大サービス」
「それ、どんどんズレていって最後にはまた食費の見直ししたりして」

笑う僕。微笑む瀧戸さん。ここが格の違いか。

「そうです。あれみたい、えっと、掃き出し法。知らない?やらなかったのね線形代数。そうね、はめ込み式のパズルでピースをスライドさせて絵を完成させるアレよね、ひとつを思い通りにするとさ、そのしわ寄せが違うところで出ちゃうのよ またそのしわ寄せを解消しようと思うとまた違うところに・・・そうやって少しづつ自分の目指すものに漸近させていけばよいのじゃないかしら。そうやって連立方程式の解を得るんじゃない人生って。 やだちょっとテツガクテキじゃない、私カッコいいわぁ」
そう言いながら、素足で青竹を踏みがらカップヌードルを啜る。やっぱりシーフードがいいわといいながら。

これが瀧戸さんのなのです。そう少しだけ華奢で洋風な顔立ちに映えるきれいな裸眼。背は高めの167cm(根拠はない)。そんな外見を吹っ飛ばすこの思考。
こんな女性をどうして放っておけようか(反語だよ)。

彼女こそが夜中にIevan Polkkaの練習を密かに積む真上の201号室の住人。


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