「ここか」 境は現在、とある病院の前にいた。この3日間で学校とこの病院はマークしておかなければならない場所だった 。そしてここに足を運んだのは、この病院がもっとも重要だと判断したからだった。 もちろん色はそのまま街に探索に向かわせている 。 境は病院の敷地内に足をいれる。だがまだ病棟ではない。ここは街から少し離れた山を切り崩し土地を広くして建てた事で有名で、病院までは少し坂道だが周りには木々で囲まれている。その坂道を5分ほど歩くと病院の敷地に入る事ができ、さらにそこからは病院の「庭」と呼ばれる場所がある。そこを抜けるとようやく病院が見えてくる。 話の限りではとてつもなく交通が不便に聞こえるが、実際の利用者は全員車、またはバスを利用しているため特に困ると言ったクレームは少ないらしい。さらにそのバスは山の入り口から無料発進するときに限り無料だった。そのため人気が高く、駐車場も多数ある。 だが境はここに一度たりとも足を踏み込んだことはなかった。本当なら、バスに乗ろうかと思ったけれど何故かバスは一台も走ってはいなかった。しかたがなく徒歩でここまで来たため、多少疲れが見えていた。 「誰もいないのか」 本当に誰もいなかった。今日は学校の帰りに寄ってから利用客で溢れていると予想し、多少ながらも気合いを入れてきたつもりだった 。 「境君、境時雨君。」
「庭」を通り病棟の扉に手を触れる所で後ろから声が聞こえたので振り返った。 そこには初めて見る女性が右手を腰にあて立っていた。 いつの間に後ろに回ったのか。境はここまで少なくとも人が来てもすぐわかる程度に警戒していたから、少なからず驚いていた。 境の前に立ちふさがった女性の存在は一言で表現するなら「普通」の女性だと境は感じた。見た目の年齢は20代後半から三十路に届くか届かないかといった感じだろう。格好は眼鏡をかけているせいかはまさに女医と言った感じだ。髪は後ろで束ねていて肩胛骨の下まで伸びているのが見える。顔はまあまあ均整がとれていて年相応に見えるが顔だけを見れば中性的で髪が短ければ男に見えなくもなかった。 「何故僕の名前を?たしか初対面ですよね」 「ええ、それは間違いないでしょう。最初に言っておきます、今すぐ帰りなさい」 「いきなり帰れといわれても困ります。まずあなたが誰なのか教えてください」 境は問う。 「なるほど、今は友好的なのですね。好戦的でも構いませんよ?」 「なるほど、では率直に聞こう、ここは現実世界じゃないな?」 女性はクスクスと笑だし 「そうですか、まあさすがあの境夫妻のお子さん。とだけ言っておきましょう。」 「いいから早く答えろ!あと10秒しかない」 「へぇ」と言い、感心し始めた。 「ここでの記憶の仕方も知っていましたか、私達は貴方達を侮っていたみたいですね。ですが時間のようですから、最後に一つ教えてあげます。貴方達は何もしなくても帰れますよ。ただ一人を除いてね。ではまた、楽しい毎日を送ってください」 「どーゆー意味だ!おい!」 そこで境の記憶は途切れていた。本人には何が起こったかまるでわからなかった。 境が倒れるのと同時に院内から男性がでてきた。 「早いな」 「ええ、あれからまだ一周間なのにすでにここまでたどり着いてしまいましたね」 男は倒れた境に近づいて顔を見る。その顔を確認すると落胆した。 「何だ、あの片割れじゃないのか」 「全く貴方と言う人は、いつもそうやって結果ばかり確認しようとするのですね」 「まあいいじゃないか、どうせ君は知っているのだろう?」 「それでは私はこれで」 女はため息を一つつくと病棟に入っていった。 「全く君もあれだね、僕にこれの後始末を押し付けるなんてさ」 さて、男はいうといつの間にか車椅子を手にし、境を乱暴に起こし車椅子に座らせた。 「面倒だが、運んであげるとしよう。だが下までだ。そこからは友達に任せるとしよう」 そのまま男は車椅子に境をのせ街までの坂道を下っていった。
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