20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:夜明け 作者:キョウ

第5回   これで
「おい、境。」
 屋上のさらに上、給水塔の真横でパンをかじりながらマンガを読んでいるやつがいた。
「なんだ色か、悪いけど連れションはまた今度にしてよ。今は催してないので」
「バッカちげーよ、お前今日の放課後空いてる?」
「無理」
 こいつ・・・考えもせず即答しやがったな。
「なんでだ?」
「いやいやそれはこっちの台詞だよ。理由は二つ、一つは目的を言わずに僕を誘うときは大抵危ない橋を渡りたいとき。二つ目は僕がオタクで引きこもりだから」
「お前それ両方とも確信突いてるけど、お前のほうは虚しくないか?」
「う、うるさいな!いい加減気付け!理由を言ったってことはそれを消化すれば承諾するって言ってるんだ!」
「はいはい、赤くなりながら怒鳴られてもね〜。で?要求を聞こうじゃないか」
 すこしの沈黙。
「それで何をするの?」
 やっぱりそっから来たか。さて、どう説明するかな
「放課後に調べたいことと、作ってもらいたいものがある」
 またまた沈黙。
 目的ではなく手段を言った所でこっちの意図に気付いたようだ。顔つきが真剣になり、読んでいたマンガも閉じた。この顔をしたときの境は真剣モードで性格が少し変わる。ちなみに軽く(?)だけど口調も変わる。本人は気づいてないみたいだけど確かに変わる。咲夜曰く、普通の人がやっているような「公私の使分け」みたいなものらしいが、オレにはさっぱり理解できない。

「もう一回聞くぞ?何をするつもりだ?」
 この状態になった境は心強い。観察力と思考を飛躍的に向上させ、自分自身すらも客観的に道具のよう扱うのだ。嘘は逆効果というわけ。
「最近の身の回りの事を調べたい。オレは頭の整理もかねて図書館へ行く。その間お前は1台でいいから小型カメラを用意してくれ、用途は教えられない」
「なぜ調べるんだ?そしてカメラも」
「それは今のおれ自身も思い出せないからだ」
「は?どうゆうことだ?」
 目を丸くして驚いている。馬鹿顔なのはご愛嬌だが。まあこんな説明じゃ仕方がない。
「家に帰れば調べたいことが書いてあるメモがあるから放課後はまず家に来てそれを見てくれ。」
 さすがに混乱してきたのか考えはじめてしまった。しょうがない、オレ自身も朝あのメモを読んだ時は意味がわからなかったのだから。
「なるほど。それで昨日までの2日間の休日中に何かしら調べなければならない事、いや、事件が起こったわけだ。しかも昨日までは覚えていたのに今日は覚えていない。つまりそれに関連すること全て忘れさせられている。というわけだな?」
 なかなかの推理力だ。きっと将来するであろう浮気調査に大いに貢献するだろうよ。ああ、これじゃあ境の職業はしがない探偵になってしまうな。せめて名探偵の助手なんてどうだろうか・・・ハド○ン君!うん、いいじゃないか!
 爆弾を持って事件を(力技で)解決だ!
「ああそうだ。それで今日はその事についてずっと考えてた」
「その事とはなぜメモした中から「身の回り」という「日常」なんだな?」
「察しがよくて助かるよ 。今の日常がどうなっているのか、それを調べたい。境、頼めるか?」
 大分考えているようだ、そりゃあそうだろう。目的となるものがわからないのに雲をつかむつもりで調べなければならないのだから。
「わ〜った!こうしよう、一つ目の理由は消化したから2つめを消化してやろう」
「へへへ〜、残念だけど僕は骨の随までオタクだよ。」
 まったく、なに笑ってるんだか。んなもん周知の事実じゃないか。しかも元に戻ってやがる。まあ、それでもジョーカーまでとはいかんがストレートくらいの手札を持ってるはずだ。いや、この手しかないな。
 とりあえず後で紅葉に謝る言葉を考えておかなくちゃいけない。
「わかってるよ。オレまで侵食されるくらいだ。お前の2次元に対する情熱は賛美に値するよ 」
「ばっか!気持ち悪いこといわないで、しかも褒められてもうれしくないって!」
 なんか否定しているけど嬉しそうだな、口元がつり上がってるぞ 。
「ああ、だから引きこもりのほうをやめさせてやる。」
 ここでちょっと「オレ、余裕だぜ」みたいな感じで笑ってみせる
「た、例えば? 」
「例えはいらない、つまり「女」だ。」
「発売日はいつ?」
「いい加減2次元から離れろ!生だぞ生!ったくなんでこんな奴が友達なんだろ」
マ ジ泣けてきた・・・。
「痛った〜!何も殴ることはないじゃん。軽い冗談じゃないだし・・・でも3次元の女なんてね〜 」
「甘い!甘すぎる!どれくらい甘いかというと放課後「こしあん」の鯛焼きを買い食いしたけど、帰ったら誰かが誕生日でケーキを食わされさらに飲み物がミルクティーだったときくらい甘いぞ!・・・ふぅ。と、とにかく!お前のは食わず嫌いなんだよ、確かにお前は現役高校生のくせにエロゲーで学園物から鬼畜ものまで幅広くプレイしている、が!しかしお前はもったいない! 」
「色ちょっと落ち着いて、君にしてはかなり熱が入ってることはわかったからとりあえず真剣に聞くから、ね?」
「そ、そうか。今日はやけに物分かりいいな。まあいい、つまりちゃんとした女を紹介してやる。もちろんお前の趣味を理解とまではいかないが妥協してくれる子を選んでくる。」
 まあすでに選んであるんだがな。
 初花とか、咲夜とか、紅葉の親友とか色々いるなぁ。
 レパートリー少ないな、オレ。
「はいは〜い、質問で〜す。」
「はいそこの村人A 」
「誰が村人だ!まあこの際いいか、問題は容姿だよ。2次元ばかりみたこの魔眼でも可愛いと思える子なんだよね?」
「はっはっは、心配するでない愚民よ。絶対に大丈夫だ」

「サー、イエッサー」
 なんか敬礼してるよ気持ち悪っ!
「じゃあなんとか交渉成立という事でいいな?」
「もちろんだ、セルにかけてもいいよ! 」
「・・・セルは置いといて、まあお前は家でメモをみたらカメラを作ってこい」
「それはいいとして、一つ重大な事聞いてなかったんだが 」

 ふむ、なんか真面目な話みたいだな・・・。
「なんだ? 」
「どうして女を紹介してくれるんだ?色にしては気前がよすぎるというか 」
「馬鹿だな 」
「何が?」
「エロゲーなどの2次元でしてることを直でやってみようとは思わんのかね?」
「おー、見掛けによらず鬼畜だったんだな。明日からはマスターって呼ばしてもらうよ 」
「呼びなはともかく鬼畜じゃあないけどな。むしろ実行したら鬼畜野朗はそっちだし」
 話しが終わった所でチャイムがなった。
「さてあと1分か、境行くか・・・ってあれ? 」
「話しに夢中だったみたいだがあのチャイムは授業が始まるチャイムなんだな〜。じゃあな、マスター! 」
まるで見捨てるように(実際そうだけど)脱兎のごとく走り去ってしまった。
「あの野郎!いつか部屋のフィギュアぶち壊してやる!! 」
 次の授業は英語のミキちゃんだ。さすがに遅れるのはまずい。とりあえずトイレで言い訳できるくらいは急ごうと思うのだ。よって教師に見つからないことを祈いながら廊下を走った。
 マスターか・・・いいかも。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 5062