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作品名:夜明け 作者:キョウ

第2回   中で
 パソコンをたたく、その音だけがその部屋を支配していた。画面にはなにやら怪物のようなのと、色々な姿をした人型が戦っている風景が映し出されている。このパソコンが動かしているのはどうやら人型の方、そして炎をだしている奴だ。姿形、攻撃モーションからして魔法使い(ウィザード)の職業を連想させた。
 ほかには剣を持つ者、弓を持つ者、杖を持った者がいる。そしてこの炎を出す魔法使いを含め4人は洞窟と思われる場所で次々に出現する怪物を様々な動きや技をだしながら蹴散らしている。そんな光景が朝まで続いた・・・。
 ふぅ。と少し声にだし、そこでちょうど自分はちょっと疲れていることに気がついた。そして誰もいやしないのに、そんな誰かに疲れたと思ってほしいような声をだした自分が気持ち悪くなって「自重、自重」と自分に言い聞かせた。久しぶりに朝までネットゲームをしたので多少疲れてしまったが、これから始業式があるのでそんなことも言って入られない。今からシャワーを浴び、支度をしなければならない。学校に行くまでの支度の手順と行く時間を逆算し、支度をする早さを決め行動に移った。準備の間、時折だるくなるがそんな邪念を考え付いたところでどうにかなるものではなく、邪念を振り払って時間通りに家をでた。
 学校まで徒歩で20分。距離的には長いと思ったことはない。でも今まで冬休みだったので今月は1月だからまだまだ寒く、調子に乗って朝までゲームをしていたことも重なり、この20分が異様に長く感じてしまった。
 でもそれは一人の時の場合で誰かといればそれも変わるだろう。今日オレ自身が朝までゲームをやっていたのも同じ理由だ。当たり前だが「一人」の時と「誰か」と一緒の時では時間の流れが違う。というわけで(どういうわけだ)、オレにもその誰かがそこの曲がり角に隠れているってわけ。もう当たり前の習慣になったけど、周りからすればとても幸せな事だと思うときもあるようなないような、まあそんな感じだ・・・。
距 離にして約数メートル先の曲がり角から一人の少女が現れた。遠くからでもわかる肩甲骨まで伸びた髪は日本人特有の黒髪がすごく似合っていて、今はまだ暗いせいもありその黒髪に白い肌はひどく魅力的で、オレにいつも何かを連想させた。オレは学校がある日は毎日ここを7時半頃通っていて、こいつもいつもどおりにここで待ち伏せていたら、いつの間にかちょうどこの時間につくようになり一緒に学校にいくようになってしまった。おっと紹介が遅れた。ちなみにそいつの名前は長月紅葉(ながつきもみじ)だ。

「おはよう色(イロ)、今日もいつもどおりで関心だね」
「おはよう紅葉(モミジ)、おまえこそたまにはオレより遅れたらどうだ?そうしたら起こしに行ってやらんでもないぞ?」
「ば、ばか!年頃の女の子の家に朝からくるなんて不埒じゃない!しかもそんなこと言いつつキミはいつも遅れた奴なんか無視して置いていってしまうからこうして毎朝遅れないようにしているのに!まったくどうしていつもそうなの?それじゃあまともな友達できないよ」
変な事いったかな?でもまあこいつの言い分はあらかた正しい。だってオレにはまともな友達なんていない。つまり変な友達ならたくさん要るってわけだ。
「まあよく聞け、これはお前のためでもあるんだぞ?こんなところで待ち伏せてたら不審者に間違えられるぞ。ただでさえまだ日がでてないし、何より寒いんだから!」
 なにやら表情が次々に変化していく。怒った顔からびっくりした顔。泣きそうになったり笑顔になったりと様々だ。経験から察するにこの百面相は、何かを考えているときの行動パターンに当てはまる。でもこの変な状態はオレは結構気に入っている。周りの人間も紅葉のこの状態が好きみたいでからかわれたりすることもしょっちゅうある。

 しばらくして考えがまとまったようだが、ここまでたっぷり5分間。長いよな。
「ま、まあそれは保留ということにして、登校時間にはまだ余裕があるから行こうよ」
 笑顔で手を差し伸べる。オレはその白い手を握り返した。あれ?やばいぞ、なぜか緊張している。しかたがないからこのドキドキが収まるまで他愛無い会話でもしながらごまかすとしようと思う。


「うぃーす」
 教室に入ると外とは違い暖かい空気が体に当たり冷たくなった体を温めてくれた。この学校は、いやこの世界では大体9時ころから日の光が当たるため基本的には1時間目が終わるまでは各教室に暖房が設置されている。1時間目の終了のチャイムと同時に自動的に暖房が切れる仕組みになっている。そのせいもあって1時間目の授業の間は暖房が効いていて、暖かい教室=眠気で居眠りする奴いる。こんな毎日が後を経たないのが現状であり、先生がたの悩みの種の一つだ。だがそれも今では何気ない日常の一つだ。そんなことを考えて周りに挨拶をしながら教室に入った・・・

「きゃー!紅葉ぃまた色君と一緒に登校ですか!うらやましいなぁ、呪ってあげたいなぁ。
あ、色君おはよう。今日もまた暗いね〜、もちろん空の事だよ?決して色君のことじゃないからね」
 言いたいことを言い終えたのか紅葉を拉致って自分の席に座らせてしゃべり始めてしまったのでオレはしょうがなく自分の椅子に座り・・・・寝た。
 
 オレに話しかけてきたこのば・・・いや、初花咲夜(ハツハナサキヤ)は紅葉の小学校からの友人であり親友だ。何考えてるのかわからない奴だけど根が悪いやつじゃあない。見た目の第一印象は髪は男よりすこし長く、多少中性的な顔立ちでのせいで可愛いよりもカッコイイが当てはまる容姿をしている。さらに紅葉にちょくちょく勉強を教えてもらっているため、ちょっと勉強とスポーツができるオールマイティ少女、ってな感じだ。だがその性格でどうして紅葉と気が合うかが謎だったりする。(紅葉も天然なので何考えてるのかわからないからかもしれん)。
 オレがこの高校に入り、紅葉と出会い3ヶ月。夏休みに入る前に付き合い始めたからオレが紅葉をとってしまったと思っているらしく、会うたびにオレたちを引き離すのが目的らしい。ただあの性格上では無理だろう。だってオレとあいつも結構仲いいのだから。
 しばらくして1時間目が終わる。ここから2時間目までの休み時間に全教室(職員室などは除く)暖房が切れる仕組みになっている。でもこれから日が当たるので、そこから少しずつましになる。でもこの時間になると決まって思うのだ。どうして学校に来てからお天道様を拝見しなけりゃならのだろうね、と。そんなものは寝ている間にすましてほしいのだけど、オレにはどうすることもできない。ただひとつできることがあるとすれば、空に向かって白旗をあげるぐらいしかない。でもそんなことをすればオレの評判が急降下するに違いない。
 さて、ここで徹夜明けの俺が一度寝たのにどうして授業に間に合うように起きたのか、疑問に思う人がいるかもしれない。もちろん自力で起きるはずがなく、結果を言えば起こしてもらった。俺の後ろにいる境時雨(サカイシグレ)が起こしてくれた。いや、起こさせた。こいつはオレと友人で関係は紅葉と咲夜と似たようなものだが一つ違っていることがある。それはなんともいえないような事なので詳しくは説明できません。というか説明したら後が怖いです。
 まあ結構いいやつだとは常々思ってはいる。大体の言う事なら言う事聞くし、俺が困るようなことが目の前で起きようとすればそれをとめてくれるとっても便利な存在だ。といってもこいつも万能ではないから、こっちも色々と世話を焼くこともあるし、なによりこいつは俺がいないとダメな部分がある。まあそれは後でわかるはずだ


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