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作品名:夜明け 作者:キョウ

第12回   12
紅葉と咲夜、境とオレで別れる事になった。理由としては境が話があるそうだからだ。
ここはすでに商店街で道には人がぱらぱらいるが、さすがに歩くにはちょっと邪魔でいつもより遅いペースで進んでいた。
この道はいつもの帰り道ではない。どちらかと言えばこっちは・・・思い出せない。
「なあそれで話ってなんだ?」
「付いてくればわかるよ」
こちらを見向きもせず、口調はいつもだがその言葉と雰囲気は「いいから付いて来い」とのものだった。本当に最近の境はおかしい、頻繁にあの状態になるし。どこかよそよそしい部分もある。
しばらくして商店街を抜けると前方に山が見えてきた。
あの山にはあるものがあったような気がして。数年前に建設された有名な・・・・。それによりこの街も、さっきの商店街も、活気を取り戻しつつあったがこの不興では思うように売り上げを伸ばせずにいたようだった。でもそれでもあの・・・・ができたことによってこの街がよりよくなった事はたしかだった。
「境、どうした?」
ふと気が付くと境を追い抜いていた。しばらく境が前を向き続けていたので前を向いてみると視界がずれた。
周りには誰もいなかった。開いている八百屋にも。肉屋にもコンビニにも。どこにいない。
いた形跡すらなく、ここはどこかの舞台かドラマのセットかと思うくらいここには「生き物」がいなかった。いや、何もなかった。
ただ、前に立っている男を除いては・・・・。

その男はこちらに気が付くと咥えていたタバコを足で踏みつけて消すと「ようやくきたか」とでも言わんばかりの顔でこちらをみた。
ここからでははっきりと顔は見えないが大体わかる。
年齢は三十に達したかぐらいだろう。すこし大人びてはいるがまだ若いとも言え、薄いフレームの眼鏡をかけているせいか眼がどんなかまでははっきりとはしない。まあある程度均整のとれている顔立ちですこしパーマがかかっている髪がとても印象的。その雰囲気はとても落ち着いている。
「やあ、奇遇だね。」
軽やかに挨拶してきたかと思ったら急に横からいつもと様子のおかしい雰囲気から一転し、殺気を感じた。
「お前があの時邪魔したやつか」
この二人の間にはよくわからんが不穏な空気が流れていた。
男の顔はニコニコと終始笑顔。だがその異様な存在感と見たことあるような格好がっていうか白衣だった。
「邪魔とは侵害だね、こちらからすれば君たちが勝手に邪魔してきたじゃないか。でもまあ邪魔だなんて言葉は立場の見解に過ぎないからなんとも言えないね。ふむ、とりあえず今日のところはお引取り願おうか、今回は手荒なマネしかできないものでね」
すると男の右手にはいつの間にか2m近くある棒が握られ、素人でもできる簡単な構えをとった。
向こうがその気ならこっちも討ってでるのが妥当なところだが、はっきり言って境には無理だ。自分自身も格闘や喧嘩なんてものは本当に小さな頃にしか体験した事がなかいくらいだしなんと言っても向こうは武器をもっているのだ。こちらに分があるとは到底思えなかった。
「さすがにそれじゃあ勝てないな、色、今日のところは退散しますか。」
「ほう、今日は自ら帰るのか、あの時は女性が相手だったから強気だったのか?もしくは君自身がただのへたれ?」
「まあヘタレって所は同意するよ」
「おい色!」
「おいおい、じゃあオレにやれってか?冗談言うなよ、お前が無理だからってオレに振るなよ、熱いのはオレの管轄外なんだからよ」
「ははは、全く最近の若いのは血の気がないね。でもまあその判断は賢明だよ、それよりも彼女達はいいのかな?」
その時さっきの言葉を思い出した、たしか女性と言っていたし、紅葉の話だと男女の二人組だったはずだ、そしてこちらには男の方がいる。ということは紅葉たちの方に片方が向かっているというわけか、さらにこちらが力で打って出たと言うことは向こうも力技で向かってくる可能性は十分にある
「境!」
「ああ、わかっている。大丈夫だと思うが僕たちも向かおう」
オレ達は来た道に進路を変え、走り出した・・・が。
「境君、嘘はいけないなぁ。まさか君、助けに行こうなんて考えてる?ははっ、またそんな嘘を貫き通すんだね」
オレ自身男の言葉の本質を見抜くことができなかったが、その意図を読み取ったのか境はピタッとあしを止めた。オレはてっきり怒っていると思っていたがその顔はまるで能面みたいになにもなかった。
まるで感情がないみたいだ。オレ自身、いや、誰もみたことがないのではなかろうか。
その時境に初めてオレは恐怖を覚えた瞬間であった。
境は作った笑顔のまま振り返える。
「何のことかさっぱりなんですけど僕達急いでいるものですからこれで」
「まあいいじゃないか、そこの片割れも聞きたがっているぞ」
え?オレ?
話し出したとたん笑み浮かべていた男はこちらを指した
境はその作り物の笑った顔でこちらを向いた。
「色、とにかく急ごう」
「あ、ああ」
「おいおい逃げるなんて卑怯だと思わないか?せっかくこっちはお前らを待ってたんだからよぉ!これじゃあ待ち損だぜ」
男の口調がいきなり変わった
振り返るとさきほどとは一転した。先ほどとは構えが変わり、顔つきがかなりちがう・やる気満々なわけね。
こちらが少しでも背中を向けるようならその棒で襲ってくる、そんな気さえ覚えた。
その姿にオレは少し、ほんの少しだけ境のあの状態を連想させた。
「わかった、少し話そうか。ただやり合わないそっちもわかっているだろ?こっちは二人なんだってことくらい。境、それでいいだろ?」
「ああ、それでいいよ」
すると男から殺気が消える。こちらの意見を聞いたというよりはやる気がないやつとはやり合わないといった感じがした。
「まあいいだろう。どうせ僕の役目は果たしたからね」
「役目を果たした?それはつまり・・・・足止めだな?」
「足止めもあるだろうけど、たぶんこの先の病院にも近づけたくない、と言うのも本音だろう、足止めだけだったら、真っ先に僕達に殴りかかってきただろうしね」
「そんな人が異常者みたいな言い方やめてくれないかなぁ、なんていうか異常者は君のほうだったね」
クックと笑った。
「さっきから境のことを言ってるみたいだけどどういう意味だ?オレ達は初対面のはずだよな、そんな人間に境のなにがわかるっていうのさ」
「わかるよ。すくなくても君たちよりは境君のことを理解しているつもりだよ?秋山色取君」
「どーゆーことだ?」
「おい色・・・」
境はオレとこの男の話を止めようとしているみたいだったが、男はそんなことは気にも留めずにつづけた。
「君たちはいつものやさしい人格が元の人格で、真剣になった時がいつもと違うと考えているようだけどそうじゃない。もちろんその逆でもない。その男はね、元々人格なんて存在していないんだよ。そう、無人格者とでも言おうか」
「はぁ?人格がないって意味がわからないよ、じゃあいつものこいつはなんだっていうんだ?」
「簡単なことだよ、人格がないのなら人格という名の仮面を被ってしまえば言いだけのこと。ほら、境君はいつもアニメやマンガやゲームをしているだろう?」
ふいに思った。まさかその話が本当だとして、いつもの人格は明るいキャラ、あの状態は冷静沈着なキャラ、そして本当は・・・。
いや、そうじゃないはずだ。キャラなんてものは2次元の話に過ぎない。人間と言うのは誰しも人格、いわゆるアイデンティティを持ち合わせいる。それがないということはただの人形だ。人間はどんなに取り繕ったところで人間の枠を飛び出ることはありえないのだ。
人間はどこまでいっても人間であることは変わらない。
色は横にいる境を見た。その顔はさっきみた顔だった。何もなかった、感情も、表情も、なにも・・・。
「もしもし守木か?そうか・・・こっちはもう終わったから早く回収して帰るぞ」
境に気を取られているうちに男はもう一人に電話をしていた。短い会話だったため、内容は容易に推測ができた。
奴の本当の狙いは足止めだった。そしてその間に紅葉か咲夜どちらかが目的だと思う。だがなぜあの二人の方にこの男が行かなかったのだろう?そしてなぜ紅葉たちなのだろう?
「さて、もう大丈夫かな。じゃあ僕は帰るよ」
「おい!」
やるべきことを全て終えたように男は此方に背をむけ立ち去るところを境が止めた。
「また君か・・・もういいだろう?こんな茶番は真っ平なのだろう?だからこうやって君たちの手伝いをしてあげてるじゃないか。それとも何か?君たちだけで解決できるとでも?それこそ茶番だ。君たちではいつまでたってもこの幕を下ろすことなどできはしない。なぜなら君たちは・・・いや、境くん。君はただの脇役にしか過ぎないのだから、君自身この世界での立場くらい把握してると思ったのだけれど僕の思い過ごしかな」
「な・・・」
まるで図星をつかれた声をだすとすでに境はかける声すらもちわせていなかった。
男が去るとオレは自然に携帯に手が伸びていた。もちろん紅葉たちに知らせるためだ。
何回目かのコールで繋がった。
「紅葉?」


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