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作品名:夜明け 作者:キョウ

第10回   亀裂の
次の日から放課後の探索を境から誘ってくる事はなかった。境を誘ってみても「当分休む」と言い放ち今まで感じた事のないような壁作り出した。しょうがなくオレは、今日からは自分だけで探索を続けた。
この日からは駅の南口を探索することにした。手順と方法は特に変更はないまま進めた。
最後に一日のデータを送ることは欠かさなかった。

境の様子がおかしい。いつもと同じように見えるのだけどなにかが違う。まるで府に落ちない点があるみたいでイライラしている。聞いてみても本人も自覚がないみたいだ。たぶん気を失ってまだ本調子じゃないと思うので一時的なものだとおもう。
例えばこんなことがあった。今日体育の授業でランニングで二人で走っている最中に急に境が足を止めた。それどころか地面に手をついて苦しそうで、呼吸も荒い。元々体かそこまで丈夫でないうえにオタクで体力なかった。そして最近二人で色々調べているからさすがにキツイかなと思い声をかけた。そしたら境の奴は何事もなかったかのように服の汚れを手で払いなが立ち、さもこっちがおかしいみたいな感じで「どうした?」って聞いてきた。
たしかにおかしいと思わないか?でもこうは考えられないだろうか。実は本当に疲れるかで本調子じゃないけど気を使ってくれてるとか、なんてね。奴に限ってんなことないか。と自分を納得させて気にしないよう心かける事にした。
授業が終わり放課後になるとオレと紅葉の所に咲夜が深刻な顔をして駆け寄ってきた。まるでその姿は周囲を警戒しているようでもあった。紅葉は咲夜の姿を見るなり側にかけより、なにやら話しているが咲夜が「大丈夫」と言うと改めてこちらに向き直った。
「二人とも放課後付き合ってよ」
咲夜にしては珍しくこちらの回答を無視した発言であった。それが自体が事の深刻さを物語っているだろう。
「オレは大丈夫だけど紅葉はどうだ?」
「う、うん。今日は特に予定はないはずだから大丈夫だよ」
咲夜はそれを聞いたとたん目に涙を浮かべうつむいた。紅葉が心配しながら咲夜を気にかけている。そしてオレ達にしか聞こえない声で「ありがとう」と聞こえてきた。
本当に今日はなんだかおかしすぎて調子が狂ってしまうな。紅葉はいつも通りだとしてもあの咲夜が落ち込んで相談を持ち掛けてくるし、境も体から発するオーラというか、ともかく様子がおかしいのだけは間違いなかった。
「で、どこに行けばいいんだ?やっぱり喫茶店とかかな」
「ごめん色君、まだ外にでたくないから屋上じゃだめかな?」
紅葉と顔をあわせ二人共特に問題ないようだから席を立つ。 しかし意外な所から俺達を止めるやつがきた。
「あれ?色帰らないの?」
横からオタクが会話に加わってきたのだった。
「ああ、ちょっとな」
なんかうざいな。いっそ警察に突きだそうかな、と思ったがさすがに証拠不十分で釈放か。ん〜Be Cool Be Cool。
「え〜早く帰ろうよ、今日はちょっと試したい事があったのに」
そういえばここ最近境と放課後から何かしていた記憶があった。どう境を追い払おうと考えていると、横から今にも泣きそうな咲夜と軽く混乱しはじめた紅葉の目線がやけに痛くて強引でも境を返すことにした。
「境悪い先に帰ってくれ、今日の放課後はなしってことで」
「ふーん」
何かを感づいたようにオレ達を特に紅葉と咲夜見る。そして何か納得したように「なるほどね」と腕を組み、口元をつり上げてオレ達を観察しはじめた。静寂がオレ達を支配していた。
「一体何?」
オレは静寂に勝てずにその場に佇んでいた。けれどその声の主を確かめるべく反射的に後ろを振り向くとそれを最初に破ったのは一番この空気に怯えていたはずの咲夜だった。この場に耐えかねてか、相手があの境だからか、それとも咲夜の勇気からなのか・・・。
「そうだよ境君。いつもと違うよ。急にどうしちゃったの?」
喋っていいと判断したのか紅葉も境に質問をはじめた。そんな境は紅葉を無視するかのようにさっきから一点を見続けている。顔を動かさず目だけで見ると咲夜がいた。これは一体どうゆうことなんだ?
「ねえ境君」
「紅葉」
境は目線だけを紅葉に向けその目線と名前を呼んだただそれだけで黙らせまた視線を咲夜に向ける。しかも、いや、やっぱり顔つきと口調からあの状態に変わっている。それからオレと紅葉は黙るしかなかったが、咲夜はただ、ただうろたえている
「なんでさっきから私ばかり見るの?ねえ!?」
軽くヒステリーが入った咲夜を構わず境は見続けている 。
「いや、やめて、こっち見ないで!」
境の視線から目を話すことができない咲夜は泣く寸前で目に涙をためた。首を振りながら机や椅子にぶつかりながらも下がっていく。そんな二人のやりとりをただ見ることすらできない紅葉とオレは呆然としていることしかできなかった。いつの間に咲夜は誰に押された訳じゃないのに壁に背中をつけていた。
だがさすがにこれ以上の圧力を二人に与えてはならない。だって今まで境この状態を誰かに見せる事があってもオレ以外にこんなことを向けた事したことがないはずだ。しかもこの二人・・・いや、紅葉所か咲夜に向けるなんて考えられないんだ。だから・・・。
「おい、そろそろやめろ。それ以上二人を怯えさせるな」
そう、三人の中で一番慣れてるオレが止めるしかなった。
「それで?」
「聞こえなかったのか?やめろと言っている」
「何をやめろと」
そうだった。今の状態は真剣な証拠で、この目も境からすればただ見ているだけに過ぎないのだ。
いや、こいつに悪意がないからってこんなことはオレが許さない。オレは境に近づいて腕を掴んだ。
「お前が今オレ達にした無言の尋問をやめろと言っている」
すると境はオレの腕を振りほどくと舌打ちした。
「わかった、せめて咲夜を見るのをやめろ」
境は目を閉じ・・・開けた。近くの椅子にオレ達とは反対の外を向きで座った。 何を思ってかはわからないが、今のこいつはオレ達に背を向けるだけの理由があるだと感じた。
「咲夜」
「な、何?」
名前を呼ぶ声はそのいつもと違う口調に驚いて身をたじろいだ。咲夜はなんとか耐えて返事をした。
「今から話せる程度に落ち着け。それができたら話せ」
「話すって何を?」
「色と紅葉に話そうとしていた事だ」
「え?」
「なるべく早くだぞ」
有無を言わさず命令すると境はそのまま何も言わなくなった。
後方から何かを壁に擦りつける音が聞こえた。同時に「咲夜!」と紅葉が叫んだ。オレはもう大丈夫だと判断し、すぐさま咲夜に近よった。
咲夜が床に倒れ込む手前で紅葉がその体を抱き抱える。そんな光景を見てオレも何かしようと思い立ち上がろうとした。だが・・。
「色」
境が邪魔してきた。
「なんだよ」
「お前は何もするな。そこに座っていろ」
「はあ?意味がわかんねえよ、理由を言えよ!」
さっきから境の意味不明な発言には正直頭がいたくなってきていた。だから少し怒鳴ってしまった。それでも境は姿勢を変える所かそのまま「はぁ」と溜め息までする始末だった。さすがに頭にきた。
「少しは気付け、今まで俺達がしてきた事は今から咲夜が話すは関係ある」
今までしてきたこと?さっきまで軽くキレていたせいか、一瞬何の事かわからなかったが、すぐに気付いた。 記憶を反芻する。大丈夫・・・思い出せる。それは商店街、学校、そして家と自分が知ってる所を組まなく探すことだった。大体思い出せたと思うが一体これがなんだというのだ?
いや・・・そうか!
「境、もしかして一番最悪な方へ進んでる?」
それを聞いた境はうなずいたが、当然紅葉達にも聞こえてしまっている。
「最悪な方って何?」
当然のように紅葉が聞いてきたがオレには返す言葉が見つからない。 もちろん境もないはずだから二人そろって黙ってしまった。
「ちょっと二人共!」
事情が呑み込めない二人をよそにオレ達は話しを進めていた。それを見限ってか紅葉が口をだしてきた。
「どうした紅葉?少し落ち着けよ」
「色は黙ってて」
「う・・・」
オレは今まで隠してきた事と、紅葉のあまりの顔にオレは黙ってしまった。
「紅葉」
「境君も色も隠している事があるなら私達に説明してよ。そうじゃないと私も咲夜もこれからどうしていいかわからないじゃない」
そう言うと境が少し、ほんの少し観念したかのように姿勢を正し、口を開いた。
「みんなの言いたい事はわかってるつもりだ。だからこそまず咲夜の話が聞きたい。咲夜、もういいだろう時間は十分与えたぞ」
「うん」
椅子に座っていた咲夜は確かにさっきよりマシに見える。でもまだ心配な部分は拭えない。それでも何かを振り払うようにゆっくりと口を開いていく。
「最近ね、おかしいんだ」
「おかしいって何が?」
すぐさま紅葉が聞き返す。たぶん男の境やオレが話すとまた取り乱してしまう恐れがあった。だからオレは黙っているし境も黙っている。
「うん、何がどうおかしいのかわかんないんだけど。なんて言うのかな・・・まるで誰もいないみたいなんだ」
「誰もって、まず私達がいるし、今日も学校にいるじゃない。まあ今は放課後でほとんどいないけどさ」
「そうなんだけど、学校じゃあみんながいるんだけど・・・」
そこでオレは気付いた。これはまるで自分自身と同じなんだ。でも、なんか違う気がするけど何が違うかがわからなかった。
「咲夜、ありがとう。もういいよ、ここからはオレが説明する」
「え?」
3人同時に驚きの声をだしていた。まるで境はオレ達が知らないことを知っていると同義だった。そう言うと境はくるりとこちらに向き直した。その姿はまるで諦めたように酷く哀しみにあふれているようだった。
「さてまず最近オレと色がやってきた事を話そうか」
3人とも首を縦に振る。
「オレ達はあることをきっかけに街と自分達の事を調べていた。やることは2つ。1つは街に異常がないか調べる事。もう1つは学校の監視だ」
おい、ちょっと待て。オレが知っているのは街の異常だけだぞ。一体どうゆうことだ?
「おい境!」
文句を言いたいオレを手で制して境は話しを進めた。
「そう、実際オレ達がやったのは街の操作だ。だがその調査でオレは異常を見つけた。それでそれをはっきりさせるために色抜きで学校を監視する事にした。そしてその異常の正体とさっき咲夜が言っていた事は同一になる」
「じゃあさっき咲夜を追い詰めていたのはなんだ?」
「それは咲夜がウソを言わないかどうか確かめるためだよ。結果は見ての通り成功だけどな」
「咲夜、今は黙って聞いてよう」
ガタッと怒りをあらわにしながら立ち上がろうとしたがオレはそれを止めた。
なんとか納得したが乱暴に座った、ここで一つ気付いた事があった、それは紅葉が黙っていることだ。さっきまで怒っていて、境からこんな意味不明な話しを聞かされても黙って聞いている。それどころか理解しているようでもあった。
本当にみんな一体どうしたんだ?と考えてみたが実はそうじゃなかったんだ。
本当にどうかしていたのはオレ自身だったんだ。今にして思えばそう思える。
「境君、3つほど質問いい?」
紅葉の突然の質問にも動じずその質問を受け付けた。
「紅葉か・・・どうぞ」
「まず1つ目。咲夜とあなた達の問題ってなんなの?」
「今は答えない。それを言うのはこちらで決めるから焦らなくても教える」
「そう・・・なら2つ目、どうして学校を監視するときに色を省いたの?」
「調査にじゃまだから、これじゃ不満か?」
「ええ、はぐらかさないで、どうして邪魔になったの?町という大きな対象に関して一緒に調べた、というのは納得できるわ。でもなんで学校を調査する時になって色に黙っていることにしたのか、それが聞きたいの」
境はまた一つため息をついてから口を開く。
「これも今はその時じゃないからあとで話そう。」
「じゃあ3つ目の質問ね」
「境君は敵?味方?」
「あ、そうだよ。今日の境はいつもとおかしいよ、どうして今だけこんなにも敵意むき出しなのかわかんないよ」
「咲夜はちょっと黙ってて」
急に口出しして紅葉に怒られてしまい、こちらに眼を向け助けを要請した。でもオレにも今の二人の攻防は手出しできずにいるし、あの紅葉が咲夜にあんな態度をとったことに対して動揺した。だから咲夜には座ってろと合図をし、それに従って咲夜は納得いかない様子だったが渋々椅子に座りなおした。
二人の迫力に咲夜とオレは黙ってみているしかなかった。境はいつものあの状態だし、紅葉も普通ではなく、真剣そのものでしかなかった。今日の紅葉は追及してくるかという疑問がいっそう深まった。
たしかに境は色々とはぐらかしている部分があると思う。それも含めて今聴く事じゃないと思った。何より、境の説明の途中じゃなかったか?でもそんなことはおかまいなしに時間は進む。
「率直に言おう。オレは味方だよ」
「ならさっきのは何?説明してよ」
しかし境は黙った。というか話せなくなったようだ。
「ちょっと境君」
「紅葉、それはオレから説明するよ」
「お、おい色」
「いいから黙ってろ。どうせロクに話もできないくせに。しかもどうせ言ったって信じるどころか誤解されちまうだろ。だからオレが言うの」
うう、紅葉さんの視線がやけに痛いです。それでも話さなくてはという感情が突き動かす。
「簡単だよ、結論から言うとこいつは何があっても俺達の味方だ。でもそれは決して口にはしない。だってこいつは臆病だからな。たださっきのはちょっとおかしかったな。これは予想なんだが、今回の事に関して確証が取れずにいたんだろう。だからオレたちを尋問するような行動をとったわけだ。たぶんもう反省して心の中では謝罪する言葉でも考えてるはずさ。ちなみに紅葉。さっきはサンキューな。オレは別に調査に関しては特に怒ってないから、ただ少しばかり驚いただけ。境は境なりにオレ達のことを気遣ってくれてるんだと思うから、質問はこれくらいにしてやってくれ」
「う、うん」
なんか雰囲気がいくらか楽になったようだ。紅葉はさっきとは打って変わって軽く混乱しているのか顔が赤い。しかもぶつぶつと何かをつぶやいている。
境も境で顔が赤いなり、さっきよりはだいぶましな顔になった。そんな境をニヤニヤしてみているとはっとしてまたあの状態にもどる。
「とにかく、オレの事はどうでもいい。それよりも今何時だ?」
「15時30分だ」
「そうか、じゃあ屋上に行こうか」
「なぜに屋上?」
「知りたいんだろう?」
意味ありげに口元を吊り上げて言うと、境はに紙とペンを机に置いた。
「これは?」
咲夜と紅葉は意味不明らしく聞いた。
「これから屋上で言う事と自分達が言いたい事、言った事、わかった事をなるべく書いてくれ。今言ったことも含めて大事な事は屋上で話す」
返答の余地もないほどにすたすたと教室をでて屋上に向かってしまった。
「とりあえず行こうか」
オレはなんとなく言いたい事に予想が付いていた。混乱している二人の背中をおし、紙とペンを取り、二人に渡し教室をでた。


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