エレベーターに乗り、五階のボタンを押す。 普段なら気にならないエレベーターのスピードも今の須藤をイライラさせた。
(クソッ、速くしろよ)
胸に抱いた小さな二つの温もりが今にも消えてしまいそうで、須藤はほんの数十秒が、程遠く感じた。
こんなにも時間の経過が永く感じるのは、美保にプロポーズした時に返事を貰う時以来だな、などと不意に可笑しな事を思い出した。 あの時もひょっとして自分以外の時間が10倍速でスローになったのではないかと感じたものだ。
不意に身体が上から下へガクンッと僅かに感じて扉が開く。 渡り廊下から見える空模様は今も荒れ狂う魔物の様に暗い重厚感が見えて、横殴りの激しい雨の音が耳を被った。
玄関の前に立ち、須藤はそこで我に帰った。
(てか、俺は何してるんだろう。こいつらには緊急事態なんだけど、美浦は… そんな余裕ないはずなのに…、このままこいつらを連れて帰ったいいのか?)
そんな風にぐずぐずと須藤が玄関先で地団駄を踏んでいると、不意に玄関が開いた。
突然の事に須藤は後ろにつんのめり尻餅を着いてしまった
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