あっもうすぐ着くぞ。』
須藤はポンコツのエスクードを病院の駐車場に停めて、入り口に向かう。
受け付けには、志村ではなく、〔江口〕と書かれたネームプレートを付けた看護師の女性が須藤達を迎え入れた。
「こんにちは〜。須藤さん、今日はにゃんちゃんのお迎えですね?」
『ええ、時間がかかります?』
「いえ、今日はそんなには。お待ち下さいね。」
エントランスで雑誌を読みながら順番を待っていると奥から志村が現れた。
「おはようございます。須藤さん、二匹とも元気っすよ。」 『おはよう、志村君。で名前の情報知らない?』
「いやいや、先生誰にも言いませんもん。」
そんな時に「須藤さーん。須藤さーん」と診察室から呼ばれた。
須藤達が診察室に向かうと、かごに入れられた二匹が静かに眠っていた。
「あ〜〜こんちは。二匹ともだいぶ元気になったよ〜。幸い感染症もかかってなかったし。」
そう言うと櫻井医師は二匹を篭から取り出し、白猫を須藤へ、黒い仔猫を美保へと渡した。 「それで、名前なんだけどさ。え〜〜と」 そう言って、手帳を目繰り出す。
「こっちの白い仔猫が、【バロン】。」 そう言われて、須藤と美保はクスッと顔を緩め見合わせた。 「あっなに笑ってんの〜、え〜〜とそれで黒い仔猫が【ノワール】ね。」
!? 須藤達はビックリして顔を見合わせた。ジブリ好きな櫻井医師ならきっと〔ジジ〕と付けるとふんでいたからだ。 「先生、ジジじゃないんですか?」と美保が間髪いれず聞き返した。 「ん?あぁ。ジジだとオスになっちゃうだろ。この子は女の子だからさぁ」
「あっそっかぁ。」 「それに、ノワールてのは、フランス語で〔黒〕って意味があるから、ほ〜ら見てみろよ、こいつ美人になるぜぇ」
と櫻井はノワールと名付けられた黒猫を優しく撫でた。
「へぇ〜。そうなんだ、なんか素敵。」
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